2026年04月23日大日乃光第2444号 貫主権大僧正様御親教
川原英照大和尚嘆徳文
「皆香衣許可状」に込められた英照大和尚への格別の御高配
(真言律宗管長、西大寺長老 松村隆誉 大僧正様)
信者の皆さん、ようこそお参りでした。 先日来、英照大僧正様の通夜、密葬、本葬儀では、信者の皆さん方には多数ご会葬頂きまして、誠に有難うございました。
密葬では北九州の水上観音寺様に御導師をお勤め頂き、奥之院大祭の助法で当山にご縁のご住職様方に職衆を勤めて頂きました。
本葬儀では、真言律宗総本山西大寺の松村隆誉長老猊下をはじめ、西大寺から六名の僧侶と、密葬でお参り頂いた皆様に再びお参り頂きました。 心の籠ったご弔辞やご弔電、供花を多数賜りました。英照大僧正様に対する心温まる思いやお気持ちがよく伝わって、有難い葬儀となりました。
前号でお伝えしましたが、長老猊下には大変有難い「嘆徳文」を奏上して頂きました。 今、御本尊様の御前に長老猊下より拝受致しました「住職辞令書」と、英照大僧正様への「皆香衣許可状」をお供えしています。 この「皆香衣許可状」の内容を、以下に現代文に訳してお伝え致します。
皆香衣の着用を許可する事
右の皆香衣は、西大寺、唐招提寺、東大寺戒壇院の上首(住職)でなければ、たやすく身にまとうことの許されない極めて格の高いものである。 この度、英照大和尚の生前の偉大な業績に報い、感謝を捧げるために、特別に皆香衣の着用を重ねて許可し、その称号を追贈し終えたところである。 よって、許可の書状として、以上の通り発行するものである。
令和八年四月三日 西大寺衆首 沙門 隆誉
蓮華院中興第三世 英照大和尚の御宝前
長年の御厚誼の証として 松村長老猊下は、英照大僧正様とは長年に亘る昵懇の間柄でした。 猊下の御法話の中に、英照大僧正様が初めて西大寺に出仕された時のお話がありました。 西大寺では、十月の初めに全国から末寺僧侶が集まって、最も大切な法要であります「光明真言土砂加持大法会」を厳修致しております。 この光明真言会に英照大僧正様が初めて出仕された時に、西大寺で最初にお会いされた方が、今の松村猊下だったという事です。
それ以来の長い間柄でしたので、長老猊下直々に、西大寺の執行部事務局に「何らかの称号を追贈出来ないか」とご下問なされたそうです。
英照大僧正様は、平成三十年の多宝塔落慶法要の中で、宗団最高の大僧正位に補任されました。 さらに令和三年には真言宗各派総大本山会から「定額位」に昇補されています。 毎年正月八日から七日間、全真言宗で最高位の僧侶方が京都の東寺に集まり、玉体安穏と国家安泰を祈念する「後七日御修法」という法会が執行されます。「定額位」とは、この法会に管長猊下の代わりに出仕出来る位階になります。 ですから英照大僧正様は、望み得る高位に既に就いておられたのです。
三百四十年ぶりの栄誉 西大寺の執行部では大変頭を悩まされて、今からちょうど三百四十年前の江戸時代に、奈良の生駒山に寶山寺というお寺を中興開山された湛海和尚が、時の西大寺の尊信長老様から皆香衣の着用を許可された故事に着目されました。
生駒山は奈良時代に役行者が開山されて以来、霊山として崇められていました。 湛海和尚は伊勢のお生まれで、江戸で祈祷師として頭角を現し、その後寺院を建立して独立、僧侶として一旦功を成し遂げられました。 ところが円忍律師に出会い、戒を授けられてから真の仏法を求めて厳しい修行に邁進され、やがて寶山寺を中興開山されました。 湛海和尚の名声は皇室や徳川将軍家にも伝わり、寶山寺は現世利益に霊験あらたかな「生駒の聖天さま」として、庶民に広く親しまれるようになりました。
実は今回の許可状に添えて、西大寺から三百四十年前の皆香衣許可状の写しが送られました。その中で、尊信長老様は次のように湛海和尚を評されています。
さて、ここにいる寶山開士(湛海和尚)は、戒律という珠を磨いて光り輝かせ、密教の灯火をもって人々の心の闇を打ち破りました。 ついに生駒の般若窟(岩窟)を住処と定め、その高潔な姿は俗世に紛れることがありません。ゆったりと部屋に閉じこもり、ひたすら心性を磨く修行に励んで、みだりに大衆の前に顔を出すこともありません。 かつて中国の慧遠大師がその高徳ゆえに世俗の評価を避け、徳を隠して過ごした故事を彷彿とさせます。 今や仏門の優れた高僧たちも、武家社会の英雄達も、皆あなたのその徳風を仰ぎ見ない者はありません。
まず湛海和尚が戒律と真言密教の双修という叡尊上人様以来の真言律宗の教えを体現する人物であった事がよく分かると思います。 そして徹底して隠者として修行に邁進された事を、中国の伝説的な名僧に擬えられています。これは湛海和尚に対する当時最高の賛辞であったと言えるでしょう。
この湛海和尚に対し、尊信長老様をはじめ当時の西大寺一門から、 「あなたはもはや一介の末寺の僧侶ではなく、西大寺・唐招提寺・東大寺戒壇院の衆首に並び立つほどの僧侶ですよ」 と、それを象徴する「皆香衣」の着用を許可されたのです。
この度の英照大僧正様に対する皆香衣許可状は、湛海和尚以来誰一人与えられた事の無い、実に三百四十年振りの栄誉なのです。 誠に有難い事であります。
今、西大寺には、蓮華院の次代を担う啓照と光照が出仕しております。 私は蓮華院の法燈を継承し、先代英照大僧正様のお志を継ぎ、信者の皆さんが安心して信仰を続けられますよう、寺内弟子職員一同と共に精進する事をお誓い致しますと共に、宗門の発展に微力ながらも貢献する事を切に念じております。合掌

大日乃光(月3回発行)を購読されたい方は、
右の「お申し込みはこちら」からお申し込みいただくか、
郵送料(年1,500円)を添えて下記宛お申し込みください。
| お問い合わせ |
〒865-8533 熊本県玉名市築地玉名局私書箱第5号蓮華院誕生寺 TEL:0968-72-3300 |