日本もいよいよ危機的状況があらわになり、今後10年間大変な状態になるだろうという予測が多くなりつつあるようです。国民の誰もが、リーダーシップがあり、日本の将来像をちゃんと示し、危機を先送りせず、構造改革のできる首相を望んでいる状況なのではないでしょうか。そこで、伊藤肇著『現代の帝王学』(プレジデント社)と呂新吾著守屋洋編『呻吟語』(徳間書店)を参考にしながら、リーダーについて考えてみました。
リーダーの資格
第一に使命感。
第二に無私。
第三に詩心。(ロマン)(器量)(余裕)(精神的深さ)
第四に現実処理能力。
トップが持つべき三つの者
1)原理原則を教えてもらう師を持つこと。
2)直言してくれる側近を持つこと。
3)よき幕賓をもつこと。(社外パーソナルアドバイザー)
岡田啓介(2・26事件の時の総理)氏
「総理になると三つのものがみえなくなる。
第一に 金。職権で思う存分に金が使えるから、金の価値がわからなくなる。
第二に 人。とりまきがふえ、総理に気にいった情報しか入らなくなる。
第三に 国民の顔。国民がいったいどちらを向いているのか、皆目わからなくなる。
そして、この三つがわからなくなった時、総理大臣は野垂れ死にする。」
人間は上にたてばたつほど、「直言してくれる側近」が必要になってくる。池田隼人元首相は、「そのために3人の心友を持て」と言った。「3人の心友」とは、「一人はすぐれたジャーナリスト。一人は立派な宗教家。一人は名医。」である。
「人物について」
「深沈厚重、是第一等素質。磊落豪遊、是第二等素質。聡明才弁、是第三等素質。」
第一等の人物は、深沈厚重。どっしりと落ち着いて深みのある人物。細事にこだわらない豪放な人物は第二等、頭が切れて弁の立つ人物は第三等である。
「徳性以収斂沈着為第一。収斂沈着中、又似精明平易為第一。」
沈着で深みのあることが、第一等の人格であり、その中でも簡単でわかりやすいのが第一である。
けだし、現代のトップは、深沈厚重で、かつ聡明才弁であることを要求されているのではないでしょうか。
「大事難事看担当。逆境順境看襟度。臨喜臨怒看涵養。群行群止看識見。」
大きな事件や困難な事件にぶつかったときに、どの程度の責任感を持っているかがわかる。逆境や順境にある時にどの程度の襟度を持っているかがわかる。喜びや怒りに心が震える時に、どの程度の修養を積んできたかがわかる。群れて行動している時に、どの程度の見識を持っているかがわかる。
「当可怨、可怒、可弁、可訴、可喜、可愕之際、其気甚平、這是多大涵養。」
「まさに怨むべく、怒るべく、弁ずべく、訴うべく、喜ぶべく、愕くべきの際に、其の気甚だ平らかなるは、これはこれ多大の涵養なり。」
怨みや怒りがこみあげてきた時、弁解や主張をしたい時、喜んだり愕いたりした時、冷静に対処するためには、普段からの多くの訓練修行が必要である。
「身要厳重。意思安定。色要温雅。気要和平。語要簡切。心要慈祥。志要果毅。機要しん密。」
姿勢は正しく、意思は安定し、顔色は穏やかに、気持ちはなごやかに、言葉は手短に、心には思いやりを持ち、志は強く、チャンスには手抜かりなくする。
「無責人、自修之第一要道。能体人、養量之第一要法。」
人を責めない、これが自分を向上させる第一のポイントである。人を理解する、これが自分の器を大きくする第一のポイントである。
「言語之悪、莫大於造誣(ふ)。行事之悪、莫大於苛刻。心術之悪、莫大於深険。」
発言するさい最もいけないのは、嘘をつくことである。物事を処理するさい最もいけないのは、厳しすぎることである。心の持ち方でもっともいけないのは、思いやりにかけることである。
「忍激二字、是禍福関。」
ならぬ堪忍するが堪忍と、じっとこらえて辛抱するか、怒って喧嘩してしまうか。そこが幸不幸の分かれ目である。
「人を見る明」
第一は人相。福相の人を選ぶ。
第二に応対辞令の妙。即ち、現実処理の能力と表現伝達能力。
第三に出処進退の爽やかさ。
第四に修己治人。
荀悦『申鑑』に、国を滅ぼす四患として、「偽、私、放、奢」をあげています。それは、
国政において嘘が多くなる。
国家、社会という公より、私利私欲を先にする。
法律を無視した放埓状態になり、政治への無関心が広まる。
国民が贅沢な生活に慣れてしまう。
の四つで、まさに今の日本の状態にあてはまります。しかし、『易経』に「窮すれば即ち変じ、変ずれば即ち通ず」という文句があるように、必ず、日本は再びよみがえることでしょう。それまで、しばし辛抱の冬の時代かなという気がいたします。
昔、大光王は、自分の王道を次のように説いた。「自分の国家を治める道は、まず、自分を修めることである。自ら慈の心を養って、この心をもって国民に臨み、人びとを教え導いて心の垢を除き去り、身と心を和らげて、世の中の楽しみにまさる正しい教えの喜びを得させる。・・・・・すべては心がもとになっているから、わたしは国を治める大本を、民にその心を修めさせることに置いている。」(華厳経)
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