４月です。多くの方々は希望に夢をふくらませていることでしょう。でも、中には、左遷されたり、リストラにあったりと落ち込んでいる方もおられるのではないかと思います。

今、私共のお寺にタイから留学生がきています。これから一年間日本語を勉強するのですが、実にのんびりとやっています。聞いてみると、タイには、『頑張る』とか、『一生懸命』とかいう言葉はないそうです。

聖書に「明日を思いわずらうことなかれ。空を飛ぶ鳥をみよ。彼らは、明日の糧を心配などしない。今日の悩みは今日一日にて足れり。」とあります。

坂村真民先生の詩にこういうのがあります。

「今を生きる」
咲くも無心
散るも無心
花は嘆かず
今を生きる

花自体は、人間を喜ばそうとか、悲しまそうとかいう考えはないのです。ただ、たんたんと咲き、己の役目のままに、たんたんと散っているのです。それを、寂しいと受け止めるか、そこから生きる力をもらうかは、その時のあなたの心次第なのです。

吉田茂がオランダに左遷された時詠んだ歌です。
『気にいらぬ風もあろうに風車』

ピンチはチャンスなりです。そこで、新しい勉強を始めては如何ですか。天が与えてくれた願ってもないチャンスです。３年間辛抱すれば、また新しい風が吹き、運が向いてくるでしょう。充電し、次に備える時なのです。

真面目すぎる人は、責任感から、鬱病やノイローゼになったりすることがあります。また、仕事に熱心すぎる人や厳しすぎる人は、周囲と摩擦を起すでしょう。すべて熱心すぎるが故のことです。意外と少しルーズな人の方が、精神的にも肉体的にも健康で長生きするものです。

同じ人への同じ注意も３度までです。それ以上すると嫌われます｡　いやむしろ、人を変えようなどと思わないほうがいいでしょう。他山の石として、自分の仕事や、向上に時間とエネルギーを注いだ方がいいのです。我々とて皆、すねに傷持つ身だから、人のことなど偉そうに言えません。西洋の諺にも「ガラスの家に住むものは、石を投げてはいけない」というではありませんか。

仏法には絶対はありません。何事であれ、執着しすぎるとよくありません。自分だけが、このやり方だけが、絶対に正しいと考えないで、妥協し、譲りましょう。

目標など立てないで、流れのままに生きていくのもひとつの人生です。「ねばならない」とか、「こうあるべきだ、すべきだ」とこだわったり、あるいは義理人情に細かく気配りしすぎると、うまくいきません。

「夫はこうあるべきだ。妻は、上司は、先輩は、部下は、・・・・。」自分の考える理想像という鋳型にはめ、それから、はずれていると許せないのです。夫婦仲の悪い方が内観をされると、実は、それらは自分の勝手な思い込み、押し付けだということに気付き、問題が解決に向います。

よいかげんに生きましょう。（いいかげんではありません。）何かに執着するから、苦しくなってしまうのです。すべてを受け入れ、感謝し、身の回りの小さな感動に喜びながら、毎日を生きていくのです。目標を立てるのも一つの生き方、立てずに流れに身をまかすのもひとつの生き方なのです。

あなたもアクセクせずに、「あるがままに」、生きてみませんか。

心に好悪を起して執着してはならない。好むこと、きらうことから、悲しみがおこり、恐れがおこり、束縛が起こる。

執着があれば、それに酔わされて、ものの姿をよく見ることができない。執着を離れると、ものの姿をよく知ることができる。だから、執着を離れた心に、ものはかえって生きてくる。（法句経）