三年前、ある会社から、社員研修として四十名くらい写経に来られました。お話をうかがったところ、たてつづけに工場内で事故があったという事でした。その時に次のようなお話をさせていただきました。
般若心経は、観自在菩薩様が、お釈迦様の十大弟子のなかで智慧第一と言われたシャーリプートラに説かれる形をとっています。観自在菩薩とは、観音菩薩様のことです。自在に観る仏様です。自在に観るとは、あるがままに深く観ると言う事です。
ところが、これがなかなか難しい。人間は大人になるまでのまわりからの色々な影響で、どうしても偏見無しには物事をみれません。皆、何らかの色眼鏡や利害関係を通して人や世の中をみているのです。
交通事故の原因は昔はスピードの出し過ぎや飲酒運転、脇見などでした。ところがもっと深く調べた結果、本当の原因の第一位は、家庭内のトラブル・悩みだと言う事が分かりました。
会社などで行われているTQC(品質管理運動)なども、現状分析のところで、自分に都合の悪いデータは無視したり、隠したりしがちです。けれども、現状把握を間違うと問題は解決しません。エイズ問題はそのいい例ではないでしょうか。
また、自分のだした天気予報がはずれた時、「天気図ではなく、天気の方が間違っている。」と言った予報官がいたというような笑い話もあります。
各界の識者の方々も次のような事をおっしゃっています。
元大本営参謀の瀬島龍三氏は、「参謀は白紙で観よ」と言っておられます。情報は集めなければなりませんが、現場ではそれらをいったん脇において、先入観なしに情勢を真っ透明な目で観、客観的に分析せよと言うのです。
経営コンサルタントの大前研一氏も一流の経営者は、「理論とか、"であるべきだ"とか、思い込み、表面的事象等にとらわれず、現状を多面的にあるがままにそのままに把握する共通点がある。」と著書に書いておられます。
堺屋太一氏は、近著「次はこうなる」の中で、「成功する為には客観的に分析し、主観的に決断する事が大事である。ところが、日本人はその逆に、主観的な思い入れをいれて分析し、横並びという客観性で決断する傾向がある。」と述べておられます。政界や経済界でも見受けられる例があるようです。
仏法ではどう説いているか見てみると、真言密教の根本仏である大日如来のもっておられる智慧、「五智」の中に 大円鏡智と、妙観察智があります。大円鏡智とは、池の面がまわりの景色をそのまま、あますところなく映しているように、すべてを明らかに観る智慧です。妙観察智とは、もろもろの事象の違いを正しく観察認識する智慧です。
ですから、問題解決のために重要な事は色眼鏡をはずして、物事をあるがままに観ると言う事ではないでしょうか。あるがままに観る事ができれば、問題は半分解決したも同然なのです。
その具体的な方法として、今、おおきな悩みをかかえたり、人生の岐路におられる方は、思い切って旅にでてみるのもいいかもしれません。あるがままに自分自身を見つめ直し、自分の人生や新しい目標について考えることができるでしょう。また、信頼できる年配の人に相談するのも一つの方法です。
それから、「内観をうける。」という人もいます。客観的にまた長期的に自分とまわりの人々について調べることにより、本当のあるがままの自分がわかり、抱えていた問題を解決し、人生が楽しくなるのです。
「あるがままに観る」ことも幸せへの入り口の一つではないでしょうか。 合掌
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