母に対して一番感謝しているはずであるが、素直に言葉や態度で表すことができない自分がいる。していただいたことが当たり前のことであり、親のつとめだろうと思っていた。高校を卒業し社会人になっても、金銭面で迷惑をかけていた。まったく社会人として一人の大人として自立していなかった。自分が結婚し、子供を授かり、初めて自立へのスタートをきったような気がする。
孫にたいしても嫁にたいしても分け隔てなく接してくれた。自分をさしおいて私の家族のためにお金とかではなく、大きな心で見守ってくれた。そんな母に対して離婚というマイナスを心に生じさせてしまった。心配をしてくれた気持に対し、私は壁をつくり冷たく言葉で跳ね返した。母に対して大きな心労をあたえてしまった。
しかし、時間が流れていくと、私自身が少しずつ前向きに考えるようになってきた。そのことを母にもどうようにしてやれたのかと考えると、して返していない。言葉で気持を少しでも前向きにして返すように、子としての自覚を持つ、そして素直に対していくようにする。
父に対しては、幼少から高校卒業までは、恨みの方が圧倒的に強く心の中にあった。しかし、社会にでて仕事を始めて、父親になって少しずつ理解できてきた。反面教師としての存在であり、正しい道を示してくれたような気がする。私が酒やギャンブルや女をやらないのは、父のようになってはいけないという思いが無意識のうちにあるからでもある。
自分がこれからの人生を意義あるものにしていく努力こそが父が与えてくれた境涯に対しての恩返しであり、私自身の納得のような気がする。存在を認め、この世に命を与えてくれた人として感じていきます。
子供に対して内観すると、男の子は私に邪気のない笑顔を毎日与えてくれた。疲れて帰っても、寝顔を見せてくれた。私を自立させてくれた。若い私自身の未熟さも露呈させてくれた。時には感情で怒ったこともあった。「苦」を楽にもさせてくれた。全てが子供中心になり、貧しくとも幸せをくれた。
娘は私に精神的な成長と守るということを教えてくれた。生まれる前から心配した。無事に生まれてくるまでに私に試練を与えた。無事に生まれてくれた。女の子らしくかわいい笑顔をいつも私に幸せと共に与えてくれた。
そんな子供達にたいして両親が離婚という生涯においての大きな転換点を与えてしまった。私自身、長い間自問自答してきた。「私は新しい人生を歩んでいいのか？」「幸せになる資格はあるのか？結婚して新たな幸せ家庭を持っていいのか？」でも前向きに親である私自身が幸せであることが、血を分けた子供にとっても大切なことだと気付いた。感謝すべきは、子供達であり、周囲の人達である。私自身の現在・過去全てを認め、大きい人間になりなさいという経験だったのでしょう。
形はないが感謝すべきものに時間もある。齢を重ねるごとに寿命は減っていくが、生きていく上での苦楽、喜怒哀楽は人間としての積み重ねを与えてくれる。時間も大きな自然の中のひとつであり、皆に平等にある。このことを無駄にするのではなく、これから私自身におこる物事を何かのための薬、苦なんだと捉え、人生における価値を自分でつくっていく。以上が、今回の内観において感じたことがらです。どうもありがとうございました。（終）
