私は父と母に勧められ、結婚して間もない妻を置いて、一人遠 方から蓮華院誕生寺の内観に参加した。正直に言って、親や妻に 対して悪いが、全くと言っていいほど、乗り気ではなかった。
宿舎に入ると説明が行われたが、乗り気でない状態の参加で来 てしまった私には、よく理解できなかった。しかし、来てしまっ た以上、逃げて博多で遊べるわけではないので、とりあえず内観 に挑戦した。
まずは、自分が生まれてから小学校に入学するまでの母に対す る自分を調べるという所から始まった。してもらった事、して返 した事、迷惑をかけた事。始めは苦戦したが、数回ほどやってい くと、結構出てくるもので、面接の時に答えていった。
13才から22才までの10年間はひどいものであった。私は かなりの荒れた生活をしていて、警察に捕まるのは当たり前、喧 嘩に盗みと、なんと高校を2回も退学させられ、その後、また学 校に進学しても、トラブルを起こして、また退学。親に何か言わ れればキレて、窓ガラスを割ったり、殺すぞと暴言の嵐で迷惑を かけた事しか出てこなかった。本当に唖然とした。
何かして返したことがあるだろうと思って、思いついたものは、 高校卒業してあげたと面接で話しても、それは自分のためであっ た。して返した事はとまた質問され、結局何もなかった。本当に 悲しかった。
親は自分のためにしてくれた事がいっぱいありすぎて、言えな いくらいに対し、私は10年間通して一つも返したものはなかっ た。さらに付け加えるならば、数え切れないぐらい迷惑をかけて きた事にようやく気付いた。
父にたいしても内観していくと、してくれた事は、学校へ行か せてくれた事や養育費など、次から次へと出てくるのに、してあ げた事になるとまったく出てこない。
その上、何故か父を殴った事や、私の事で父が他の人に頭を下 げてる所の映像が頭の中をよぎってしまう。本当に迷惑しかかけ てないんだなと思うと、父や母に対し、申し訳ない気持ちで胸が 痛かった。なんで俺なんか生んでくれたんだとまで考えてしまっ た。
妻に対してはさすがにあるだろうと思ったが、してもらった事 や迷惑をかけたことは多々でてくるが、して返した事は、何かを 買ってあげたとか、どこかに連れていってあげた位しか出てこな かった。結婚して間もないからしょうがないと思いたかったが、 これは今まで自分中心に生きてきた結果なんだと気付き、面接の 際、涙した。
母から父、父から妻と、妻から母に、また2巡目の時には、さ らに追い討ちをかけるようなひどい事などを調べだしてしまい、 正直自分を責めすぎて、まいりそうになった。
でも、その時の救いは、朝夕のお経と、勝手にやっていたトイ レ掃除だった。もともとお経には興味があり、大梵鐘をついたり、 五重塔の本堂や大仏様の前でお経を唱えると、身が引き締まり気 分もスッキリしていた。
勝手にやっていたトイレ掃除も、正直始めは我が家の便器とは 違い、和風で汚いイメージしかなかった。確かに皆で使っている ので汚れてはいたが、きれいにすることによって、自分の心が洗 われているような感じだった。
かといって、今までの悪業や恩に対し、許されるわけではない が、私は今回内観をしにわざわざ九州熊本まで親に来させていた だいて、本当に感謝している。
自分を見つめ直すことによって、気付かなかった事の大きさを 感じる事ができ、また今後の人生で、いろいろな人や物に対し、 心から感謝できるんだろうと思う。
内観はここで終わりではなく、ここからが本当のスタートにな っていくと、私は思う。そして、今は両親に会って、ただ感謝を 伝えたい。
教えを説く者は、忍耐の大地に住し、柔和であって荒々しくなく、 すべては空であって、善悪のはからいを起こすべきものでもなく、 また執着すべきものでもないと考え、ここに心のすわりを置いて、 身の行いを柔らかにしなければならない。(法華経)
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