「お父さん、また酒飲んどる。」「あら1.8リットルを半分も飲 んどらす。」「そんなに飲んだかな。うるさい。」

　そんな怒声が家中になりひびく午後７時頃、妻と娘が私に「や めるって言ったでしょう。」「いつ買って来たの」「会社の帰り、 スーパーで。」「もう入院３回目でしょう。体がどうなっても知 らんけんね。」「悪いと思ってもどうしても手が出てしまう。」 と、妻と娘に言っている。

　「今度から」「今度から」を何回言ったのか。私の体のことを 心配して言ってくれているのは、充分わかっている。

　ある日娘がポツリと言った。「お父さんはいいよね。酒飲んで 体悪くして、悪くなったら母さんに見てもらって。母さんは言う とらす。酒さえ飲まんかったら。仕事は黙って愚痴も言わんとさ す。勉強もさす。母さんのために酒をやめんね。」

　この一言で今度本当にやめてやると思ったが、どうしたらいい のか分からない。二度と飲まないようにどうしたらよいか。病院 へ入院するか。しかし、これもダメだった。断酒会にはいろうか。 成功率が２８％か---------。

　ふと思いついたのが、お寺に行って修行するか。でも一日ぐ らいの座禅でいいのだろうか？インターネットで調べる。

　座禅から引いていく。ずらりと並んで、一つ一つ調べていく。 玉名市の文字が目に入る。蓮華院誕生寺の奥之院。座禅がある。 調べていくうち、内観法とあった。説明や体験感想文を読み、 よしこれだと思い電話した。「わかりました。」の返事。一週間 内観をしてみることになった。

　奥之院に着くと、早速案内され部屋に。びょうぶと布団と小机 があった。３時から説明があり、座布団にすわり、母に対して小 学校前の自分にしていただいた事を観ていくと。してもらった事 ばかりで、感謝する事ばかり。

　小学校、中学校、高校、社会人と観ていくと感謝ばかりで、涙 が涙があとからあとから止まらない。事あるごとに心配と迷惑を かけている。してもらった事がいっぱいある。して返した事はな い。

　今度は父を調べるが、してもらった事ばかりで、何もお返しは していない。次に妻を観るが、やはり、してもらった事ばかりで、 何もお返ししていない。父にはもうお返しはできないが、仏壇に おまいりする。母には、帰ったらお返ししよう。

　酒代を計算してみたら、何と1,600万円にもなっており、本当に ビックリした。家一軒分飲んだことになる。

　妻には、絶対酒は飲まぬと本当に心から言える。内観して本当 に体が軽くなったというか、今日終わるが、これからの毎日が楽 しくなった。

　度胸がついたという気持ちで、また、今度の資格試験に対して 集中力がついて、やる気がでてきた。人生短期目標の最初の目標 なので、必ず取る。今度ここに来る時は、お礼参りに来ようと思 っています。

　長いようで短い一週間でしたが、これからの人生におおいにプ ラスになった一週間でした。本当に本当にありがとうございまし た。

　私共のために、朝はやくから夜おそくまで、して下さった先 生方に感謝します。また、おいしい食事を作っていただいた方々 に感謝します。最後に本院のご住職様ありがとうございました。

　この貪（むさぼ）りと瞋（いか）りと愚かさは、世の三つの火と いわれる。貪（むさぼ）りの火は欲にふけって、真実心を失った 人を焼き、瞋（いか）りの火は、腹を立てて、生けるものの命を 害う人を焼き、愚かさの火は、心迷って仏の教えを知らない人を 焼く。（本事経）