2000年1月1日第83号
幸福ニュース

月の光と水面の心

新年おめでとうございます。

2000年に年号もかわり、新しい時代が来るという予感を感じます。新年の干支は「庚辰(かのえたつ)」です。この年は「改革進化」の年であると言われております。個人だけでなく、国家も新しい出発の年にしたいものです。

今回は、大阪の竹下様の投稿を皆様にお伝えいたします。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

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【 車イス補助から学ぶこと:「月の光」と「水面の心」 】

暗闇では何も見えないが、月の光に少しでも照らされると、ぼんやりでも「物」が 見えてくる。少しの光りでもあれば何かが見える。私には、自分では何もできない 寝たきり青年がいてくれるから、私の影が映し出され自分の姿が見えてきたように思う。まるで、月の光に照らし出されたように。

池に映った逆さ富士の絵ハガキは本当にきれいだ。しかし、水面に波がたっているときは、なにも映らない。怒ったり、威張ったり、焦ったりしている心には何も映らない。水面も心も同じだ。

瀬戸物と瀬戸物がぶつかれば壊れてしまうが、瀬戸物とスポンジがぶつかってもこわれることはない。その時、自分はスポンジだが、相手が瀬戸物だから悪いんだと思うことがある。あくまでも自分が瀬戸物だから良くなかったと、思うようにならなければならない。

月の光を持たず、餓鬼やエゴの心で波立っている時は、何も見えない。見えるようになるためには、ただ、生かされていることに感謝し、人に喜ばれる生き方をしなければと、今日のラジオの話を思い出しながら、車イスを押した。

先日まで、青年は入院をしていたらしいが、今日は元気だった。気温は低いが、日あたりは暖かい。車イスを引っ張りながら玄関を出るとき「アーアー」と、目で自分の帽子を追いかけ、帽子かけにかかっている一つがお気に入りの外出用で、外出時に帽子をかぶるのが最近の仕種とのこと。

今日は天気もいいので、駅まで電車とバスターミナルにバスを見に行った。上げにくい右腕をゆっくり上げ、曲がったままの人指し指を懸命に伸ばそうとしてバスを指差す、うれしそうに喜ぶ笑顔は、本当にいい顔だ。こちらも嬉しくなる。これこそがお釈迦様のいわれる無財七施の中の「顔施」であろう。いつか、私も動けなくなった時は、せめて「笑顔」と「感謝」の気持ちだけは忘れないようにしたい。

そして、今日は天皇誕生日である。あさってはキリストの誕生日である。私も車イス補助の開始からちょうど満1歳の誕生日を迎えた。 目に見えない何かの作用で誕生した、かけがえのないたった一人の人間。その人間と人間が何かの縁で出会い、こうしていろいろなことを教えてもらっている。この出逢いはとうてい人間の力では及ばない何かがあるような気がする。

「戦後第四のピーク」と呼ばれる少年犯罪は、凶悪化に歯止めがかからず深刻さを増している。 警察庁によると、今年1〜11月に刑法犯で摘発された少年(14歳以上20歳未満)は4年ぶりに減少、前年同期よりも9.8%少ない13万23人である。

だが、気になるのは、少年による凶悪事件が増加していることだ。殺人や強盗などで摘発された少年は、3年連続で2000人を超えている。中でも3人以上の集団が起こした事件や刃物を使った強盗が増えているほか凶悪犯罪に結びつきやすいひったくりも増加しているのが目立っている。強盗は1967年以降で最悪だった97年の同期とほぼ並んだ。

(中略)

1998年度版の「青少年白書」も少年らの凶悪事件に触れ、物質的な豊かさや人間関係の希薄さなどを挙げながら、「社会規範が崩壊の危機」にあると強調している 。少年犯罪だけではなく、子供たちを被害者とする犯罪も頻発している。子供たちが安全で安心して暮らせるようにするのが私たち大人の責務である。

そのためにも子供たちが社会性や人間性を高める環境を学校だけでなく社会の中にもきちんと整備して、十分に活用していくことが求められる。子供たちの夢をはぐくむ21世紀をつくるためにも社会全体のモラルが問われている。
(‘99年12月23日付 沖縄タイムスより)

英国のデズモンド・モリス氏は、21世紀は、 「必要であるかどうかにかかわらず、 科学技術は進むでしょう。電子メールやインターネットのようなコミニュケーションの 道具も次々に登場するに違いありません。でも、触れ合うことの大切さも忘れてはいけません。都会の便利な生活は刺激的ですが、ストレスも多い。やわらかで優しい触れ合いはますます大切になるでしょう。」といわれている。

奈良 法隆寺の堤氏は、知恵遅れの子供達(7人)を自分の子供のように育てている。また剣道の小中校生に本物を聴かせてやりたいと、毎年2回道場で近所(約200名)の方々を招いてコンサートが行われている。

このコンサートを開催するにあたっては、道場を応援している近所の方々やお母さん方が、設営や食事の世話に一生懸命である。もちろん無料奉仕である。コンサートの演奏者も管弦楽等のプロであるが、堤氏の趣旨に共鳴して、もちろんノーギャラである。

ここには、モリス氏のいう「優しい触れあい」があると、私はこのコンサートに参加して感じた。そして、ここには失われた日本のすばらしさがある。

遺伝子の研究をされている筑波大 村上和雄教授は著書{サムシング・グレート}の中で、「自分の体といっても、生も死も自分の思いどおりにはコントロールできません。 コントロールできるのは自分の心だけです。

だから、生きているというより生かされている存在であること。人間というのは、本来は毎日がうれしくて楽しくて、イキイキ、ワクワクしながら生きるのが理想、サムシング・グレートはそういう目的をもって人間をつくった違いないと…。

この考え方は最近プラス思考とかプラス発想という言葉で表現されていますが、イキイキ、ワクワクするためには、自分のことばかり考えていてはダメ 、自分のすることが周囲の人の喜びにもなるような行いをすること、これがイキイキ、ワクワク生きる最大のコツなのです。

なぜ、それがいいのか。他人のために尽くしてイキイキ、ワクワクすることが、遺伝子のスイッチON/OFFとかかわっているからです 。自分の存在が何かの役に立っているとわかれば、人は生きがいを感じます。私が人生の転機で予想外の力が出せたのも、このことと関係があると思います。」

このような、暗闇の時期にこそ「寝たきり青年のような」月の光に目を向けるときではないだろうか。親は子供の鏡であるといわれている。堤氏のようなことはなかなかできないが、 誰かの燈す光を待つのではなく、いくら小さくてもいいから一人一人が進んで何か燈す気持ちを持って行動すれば、一人一人の遺伝子がスイッチONになり世の中は変わってくるように感じる。合掌

【坂村真民詩集】

《 ぬくもり 》

地球よ平安なれ

人類よ幸福なれ

と祈る一人の祈りを

万人の祈りとしよう

このかけがえのない地球を

少しでもよくしてゆく努力を

すべての人たちと誓い合おう

そう祈るわたしの体に

地球のぬくもりが伝わってくる

未明混沌の刻の

彼岸の砂地

【仏語集】

{ 道場 }

職場は道場である
家庭もすばらしき道場である
道場であるがゆえに
いろいろな問題が課せられる
これでもか これでもか
次から次へと課題は尽きることはない
親子の問題
夫婦の問題
嫁姑の問題
経済の問題
教育の問題
宗教の問題
老後の問題
ありとあらゆる問題が山積みしている

この問題が一挙に押し寄せてくることはない
一つか二つくるのが普通である
この現れた問題を
避けることなく直視して解決していく

一つ越えるごとに
今ある心の器は一つ大きくなる
千を越えればそのスケールは大きくなる
千を越えれば巨大になる

今日 今現れている問題に
感謝の気持ちをもって取り組んでいく
喜びをもって積極的に取り組んでいく
そも時天からの褒美として
あたたかな光の波動が
全身を包みこんでくれる

(五井昌久師)

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バックナンバー

第81号 感謝の心

第79号 内観の大切さ

第77号 兎三題

第75号 脳力開発

第73号 願いをかなえる法

第82号 お坊さんの内観

第80号 小さな実践の一歩から

第78号 視覚障害者の日本縦走記

第76号 金持ちになる法

第74号 九州内観懇話会講演

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