『内観』とは、身近な人々(母または母親代わりに育ててくれた人、父、配偶者など)に対する自分を見つめるために、(1)していただいたこと、(2)してさしあげたこと、(3)迷惑をかけたこと、について、具体的な事実を過去から現在まで調ベる方法です。
内観は新しい自己を発見し、人生をリフレッシュする自己開発の方法として役立っています。また、社員研修や、非行、不登校、夫婦・嫁姑の不和、心身症、摂食障害、アルコール依存症など心のトラブルに対する心理療法としての価値が認められています。
私は主人と仲が良くありません。でも、この内観を通して、相手の立場にたつという難しさに、困惑していました。5日目の木曜日になり、母・父・主人に対して2回目なのに何も出来ていない自分がいました。
相手の立場に立てず、独りよがりの自己中心的な、自分さえよければ、自分の考えでいくのよ、と意思を通して、だんだん暗い、以前のような明るい家庭生活は、なくなっていました。
わたしの求めていたのは、こういう生活ではない。貧しくてもよい、皆仲良く暮らしたい、そういう生活をしたいと、2〜3年前より思っていました。
家へ帰ってくると、飲む主人がいる。飲むと、自己中心で、暴力をふるい物を壊す。「お酒を飲まないで」と言ったら、一升ビンを割る。だんだんと家庭生活がこわれていく。そういう日々が続きました。
いつのまにか会話もなく、主人は自分の部屋で、夕食がすんだらテレビをつけ、かくれ飲みをする。自分の安心する生活を作っていったのかもしれません。母を通して子を思う親の気持がわかりました。
それに対して、私は母以下です。いえ、下の下、虫けらです。家のことは母にまかせ、仕事に逃げていて、その問題に触れたくないと、逃げていた自分がいました。
金曜日、主人に対する最後の内観面接で、(1)お世話になったこと、(2)して返したこと、(3)ご迷惑をかけたことを、主人の身になって調べていくと、主人のアルコール依存症がふっと頭に浮かびました。主人も私も、親から生まれ、育ち、養育時代の暴力、夫婦間の暴力を見た子供は、大人になり、また父親と同じ暴力をしてしまう。そういう生い立ちだったのかなと思いました。もし、自分もその立場だったら、アル中になっていたでしょう。
主人も何らかの問題があって飲まずにいられない性格に変わっていったと思います。長い船員生活です。中学を卒業し、その後自分一人、外航という、世界を廻り、荷を積み、おろす仕事です。皆と一緒にする。自分は失敗し、怒られる。おもしろくない。酒を飲み、また、失敗。忘れたい。酒を飲む。その繰り返しだったと思います。
皆、この世に身ひとつで生まれ、相手がいて、自分がいる。自分がいるから、相手がいる。この世は自分ひとりでは何も生かせないのです。相手がいての自分なのです。
依存症の性格上、こういうことです。1+1=2 式・答ともこの一通り、白黒はっきりしろという。そういうことでなくて、いろいろあってよいと思います。それが世の中です。そういう風にいろんな人がいて、それが味があり、また違う道も見えてきます。
主人と話し合いをすることもなく過ごす毎日でした。身体的、精神的、二通りの病気です。心が「助けて!」と叫んでも、自分ではどうすることもできない。悪いと思いつつ、ついついやってしまう。だから、「止めてくれ!」と叫んでいるように思えました。
今、内観をして気づきました。一番苦しかったのは、主人でした。毎日毎日、酒に依存していく。自分を見、止めたいけど、どうしようもなく、毎日を過ごしていたと思われます。
帰ったら、「苦しかったでしょう。あなたに何も出来なかった私。ごめんなさいね。」と言葉をかわし、そういうことに対して、心の傷を取り除き、その後、問題を少しずつでも解決し、明るい家庭生活を早く取り返せるように、自分なりの努力をしていこうと思います。
最後に、内観に対して、ここまで気づかせてくださいまして、ありがとうございます。
家庭は心と心がもっとも近く触れ合って住むところであるから、むつみあえば花園のように美しいが、もし心と心の調和を失うと、激しい波風を起こして、破滅をもたらすものである。この場合、他人のことは言わず、まず自ら自分の心を守ってふむべき道を正しくふんでいなければならない。(パーリ、本生経)
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