『敵を知り己を知れば、百戦危うからず』と申しますが、現在日本では、年間約六万三千点の新刊本が発行されているそうです。一日あたり、百八十点にもなりますから、本屋さんの店頭にもならびきれないし、全部読みきるというのは、もちろん不可能です。その他にも、テレビ、新聞、インターネット等、現代社会は情報の洪水になっています。
その中で自分にとって必要な情報をどのように選択していくのか、今回は有名なジャーナリスト立花隆さんの『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』((株)文芸春秋)をご紹介させていただきます。
このような情報社会でのサバイバル技術が、素早い情報スクリーニング術であり、素早い情報摂取術なのです。そしてその基本は、「絵画的読み」の速読術なのです。
そのコツだけ述べておくと、コツは、とにかく頭から終わりまで、とりあえず続き具合がよくわからなくても、パラグラフ単位で飛ばし読みをして、強引に目を通してしまうということにあります。大切なのは、キーワードの拾い出しと、全体的な構造・論理の流れ(フロー)です。
逐文章的に本を読むのをやめ、パラグラフ単位で、パラグラフの頭の文章だけを次々に読んでしまうのである(大事なことはパラグラフの最初のセンテンスに書かれていることが多い)。
続き具合がわからなくてもとりあえず、ワンセンテンスでやめて(これが大事)、次のパラグラフの頭の文章に飛ぶ。それだけのことなら、一ぺージ一秒、ちょっと遅くても二、三秒で読める。三百ページの本で、三百秒から九百秒、つまり、五分から十五分しかかからない。
時間に余裕があったら、パラグラフのお尻のワンセンテンスも次々に読んでいくことを加えるのもよい。(お尻に大事なことが書いてあることも多い)。それに加えて、章か節の小見出しだけはちゃんと読み、図表もある程度見ておくとして、その倍の時間があれば十分だろう。
もちろん、それだけでは読んだという部類には入らず、ページをめくって目を走らせただけというに等しい行為だが、それだけでも、その本の流れが相当つかめるものである(うそだと思ったらためしてみるとよい)。大事なことは、はじめから終わりまで、一ページ一ページ、全ぺージをとにかく目を走らせながらめくってしまうことである。
まず終わりまでいってから、二度目の読みはどうするかを考える。終わりまで行きついてみたら、その本はそんなに精密な読みをする必要がない本だということに気がつくかもしれない。要するに、私がいいたいことは、本は必ずしも、はじめから終わりまで全部読む必要はないということである。
結局、本を読んでいく上で何より大切なのは、その本がいまの自分にとって、どういう読みを要求しているかを素早く見きわめ、それにふさわしい読みを選択することである。
「味わい楽しみながらゆっくりと読む」「論理をきちんと追いながら精読する」「必要なところ、気にかかるところだけ拾い読みする」「パラパラめくって、目についたところだけ読む」「キーワード中心で、情報だけを読みとる」「必要な一部分だけ読む」など、自分の読みのバリエーションを幾つか作っておいて、それに合わせて読むということである。
そして、最後に、いかなる本を読む場合でも忘れてはならない忠告を一つ。『本に書いてあるからといって、何でもすぐに信用するな。自分で手にとって、自分で確めるまで、人のいうことは信じるな。この本も含めて。』
司馬遼太郎氏の読書法も全く同じで、ひとつの小説を書くために古本屋に頼んで集めた膨大な古文書の資料を、一ページ約2〜3秒ぐらいで読んでおられたそうです。ですから、立花氏と同じく、あれだけの素晴らしい本を書けたのでしょう。
大日如来の五智の一つに「妙観察智」があります。すべてをあまねく見る智慧です。仏法の基本的な考え方は、物事を「事実を事実としてあるがままに観、常にあらゆる角度から考え、複数の見方をする」ということです。
読書の場合でも、心をさらにして、自分と反対の意見でも、まず一旦は受け入れてみるという心構えが必要なのではないかと思います。取り入れる取り入れないは、その後すればいいのではないでしょうか。
何故ならば、人間の目はすべてを見ているが、人間の意識は自分に興味のある一部分しか見ていないからです。ですから、油断すると、自分に都合のよい情報しかピックアップしないということになりかねません。いちど自分の頭を意識的に空っぽにして読めば、新しい情報もはいりやすくなるのではないでしょうか。
速読法のひとつに、新聞や雑誌の書評欄を利用するという方法があります。そして、この本には著者の読まれた膨大な本の中で面白い約3百冊が紹介されています。日頃、我々が目にすることの少ない幅広い分野から選んでありますので、一読の価値があります。「目からウロコ」のような情報にきっと驚かれることでしょう。連休の残りをどう過ごそうかと考えていらっしゃる方にお勧めの一冊です。
教えを説く者は、忍耐の大地に住し、柔和であって荒々しくなく、すべては空であって善悪のはからいを起すべきものでもなく、また執着すべきものでもないと考え、ここに心のすわりを置いて、身の行いを柔らかにしなければならない。(法華経)
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