2001年6月1日第127号
幸福ニュース

【 大 茶 盛 】

現在、蓮華院誕生寺の奥之院で『大茶盛』を行なっておりますが、これは、鎌倉時代の延応元(1239)年より奈良の西大寺に伝承され、750年以上の歴史をもつ特異な西大寺流といわれる茶儀であります。

奈良時代に創建された西大寺を鎌倉時代に復興された興正菩薩叡尊(こうしょうぼさつ えいそん)(1201〜1290年)が修正会の結願のお礼参りに、西大寺鎮守「八幡宮」に茶を献じ、その余服を参詣者に健康を祈願してふるまったことに始まります。そのことから、広く一般の庶民にお茶を普及するのに、この大茶盛が大きく貢献したと言われています。

また、興正菩薩叡尊は日本福祉の先駆者でもあり、当時ライ病(ハンセン氏病)患者や、差別を受けていた人々の救済に尽力をつくされました。その時、薬としてお茶を人々にふるまったとされています。また飢餓に苦しむ人が多かったためお茶ではなく、お粥をほどこしたとの説もあります。

以後、戒律により飲酒が禁じられたため、お茶で宴会をしたので「酒盛」に代わり「茶盛」と称されました。以後この大茶盛は、興正菩薩叡尊の薬を施すという福祉の精神と、戒律の不飲酒戒の精神が基礎となり、今日まで西大寺に連綿と伝承されて参りました。

そして当寺は、昭和53年奥之院開創に当たり、西大寺より全国では唯一、分流として正式に免状を受け、大茶盛を行うようになったものであります。直径40センチメートルほどの大茶碗で周りの人に助けられながらお茶を飲む様子は、実に和やかであり、まさに『一味和合』の趣であります。

それでは、「一味和合」のためには、どうすればいいのでしょうか? 仏法には、「絶対」ということはありません。「すべてをいったんゼロベースにして、本質的に考察してみる」また、「いろいろな角度から観、いろいろな考え方をしてみる」というのが仏教の思考法です。

ですから、「自分が常に正しい」「・・・ねばならない」「・・・であるべきだ」は争いを生みます。《自分が勝手に作り上げた》理想の夫像、妻や上司のイメージ、仕事のやり方、・・・のありようからはずれているといって人を批判する人がいます。

しかし、他人の悪口を言ったり、批判や注意ばかりしている人は嫌われます。人を立てれば自分も立つのです。多様性を認め、人の足を引っ張らず、お互いに誉め合い、助け合うことが大事ではないでしょうか。

「般若心経」の主題は、「かたよりすぎるな。こだわりすぎるな。とらわれすぎるな。そして、とらわれすぎないということにすら、とらわれすぎるな。これ、般若心経『空』の心なり。」であります。

また、小泉首相ではありませんが、「大事争うべし、些事(さじ)争うべからず。」 さらには、「上善は水の如し、水は善く万物を利してしかも争わず。」(老子)であります。

ところで、茶事には、お薄もあれば、お濃茶もあり、朝茶もあれば、夜咄(よばなし)もあります。また、作法は流派ごとに違います。お点前やお茶碗の廻し方、立ち方等が少しずつ異なります。共通しているのは『相手中心のおもてなしの心』で、これがお茶の根本ではないでしょうか。

有名な「利休七則」の話があります。千利休に対し、ある人が「茶道とは何ですか。」と尋ねました。それに対し利休は、「『茶は服のよきように点て』『炭は湯の沸くように置き』『冬は暖かに夏は涼しく』『花は野にあるように生け』『刻限は早めに』『降らずとも雨の用意』『相客に心せよ』、この七則がすべてです。」と答えました。

すると尋ねた人は怒って「そんなことくらいは、三才の子供でもわかっております。」と言いました。すると利休は「わかっていてもできないのが人間です。あなたが本当にできるならば、私が弟子になりましょう」と言ったということです。

当たり前のことを当たり前に行うということだと思いますが、仏法にもこれと似たような話があります。そこでは、「『悪いことをしないで、善いことをする。』のが仏教である。しかし、大人ほど実行が難しい。」という問答が行われています。

真言宗では、「仏様と他人と自分は本来同じである。」という考えがあります。ですから、「自分がされたくない事はせず、自分がして欲しいように他の人にしてさしあげ、そして、それを忘れる。」と、人間関係もうまくいき、人からも大切にされるのではないでしょうか。

また、お茶ではよく、『和敬静寂』という事が言われます。「和敬」とは人間同士はもちろん、自然界全てのものに対する思いやりと尊敬を意味します。人だけでなく、お道具や、空気や水や火にも感謝しましょうということです。

「静寂」とは文字通り心の静けさ、つまり清浄な心、澄みきった悟りの心です。この精神こそ、お茶の世界だけでなく、忙がしい現代の人間に特に必要だと思います。常にこの理念と心の余裕を持っていれば、世の中から争いは無くなるのではないでしょうか。

千宗室宗匠は「一わんからピースフルネスを」とおっしゃられています。これは、大茶盛の精神と同じです。皆様方も、疲れた時など、たまには、のんびりとお茶(あるいは、紅茶やコーヒー)をたてて、ひとときの安らぎにひたられてはいかがでしょう。忙しさにまぎれて、普段忘れていた大事なことをきっと思い出すのではないでしょうか。合掌

【坂村真民詩集】

《まんまるいもの》

宇宙の心を

だんだんだんだん

煮つめていったら

まんまるいものとなった

その時ああこれさえあれば

なにもかも良くなると思った

このまんまるいものを

うんと作って多くの人に

飲んで貰おうと思った

キラキラ光る

まんまるい宇宙の真実(まこと)

すべてをまるく包んで

平和にしてゆく

輪廻の教え

【仏語集】

教えを説く者は、忍耐の大地に住し、柔和であって荒々しくなく、すべては空であって善悪のはからいを起こすべきものでもなく、また執着すべきものでもないと考え、ここに心のすわりを置いて、身の行いを柔らかにしなければならない。

さまざまな境遇の相手に心をくばって、権勢ある者や邪悪な生活をする者に近づかないようにし、また異性に親しまない。

静かなところにあって心を修め、安らかに保ち、すべては因縁によって起こる道理を考えてこれを心のすわりとし、他人を侮らず、軽んぜず、他人の過ちを説かないようにしなければならない。(法華経)

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