2001年9月1日第137号
幸福ニュース

【日本のより良い未来をつくるために】
(何故、日本は暴走するのか)

日本人は何故、暴走するのか。何故、軌道修正できないのか。いつも不思議 に思っていました。ところが、その謎が明治時代に山県有朋のつくった官僚 制度に起因することがわかりましたので、今回は、その2冊を皆様に紹介し たいと思います。どちらも非常に労作で、我々に多くのことを教えてくれま す。皆様も是非お読みになって下さい。

『日本の戦争』
(田原総一郎著 小学館発行)

日本は何故、太平洋戦争に突入したのであろうか。(上層部は皆、負けると わかっており、反対であったにもかかわらず。)これが、著者の長年の疑問 であった。その謎を自分で調べ、解き明かしたものである。以下が、主な原 因と考えられる。

日本帝国憲法の不備(首相権限と統帥権の問題)は、もちろんである。そして 、情報を軽視する体質があり、情報収集力の差も決定的であった。例えば、
a)暗号解読による日本政府の情報と、独ソ戦は最終的にソ連勝利の情勢分析 から、日米開戦の年、即ち1941年9月には、アメリカは日本との戦争は さけられないと判断していた。
b)日米開戦の12月8日にヒトラーはモスクワ攻撃放棄指令を出している。 つまり、ドイツの敗北が始まったその時に、日本はアメリカと戦争を始めた のである。

一旦決めたら、そのまま突っ走り、情勢変化に伴う、軌道修正をしない。そ のためには、不利な情報を上層部や国民に知らせず、情報不足や情報の捏造 で誤判断を導いた。

信賞必罰が行われなかった。このため、中国での戦争拡大を阻止できなかっ た。(政府の不拡大方針や軍命令に対して、命令違反者や悪い結果を出した 者への処罰をしないどころか、出世させている。)

国より、所属組織への忠誠心が優先する。海軍は日米開戦の前、開戦した結 果、国がどうなるかの判断より、鋼材割当量の大幅増額を要求し、これには 、東条首相もあきれて言葉が出なかった。(国益より省益優先の村意識。) 関東軍は、勝手に中国での戦線を拡大し、泥沼にひきずりこまれた。

マスメディアも戦争に賛成した。

最後には、自己組織保全、責任逃れの行動(負けた場合は、軍に責任をとら せる)をとった。

日本を暴走させたシステムはまだ、残っているのです。そこをくわしく分析 し、解決法を述べた力作です。すべての議員の方々にも読んで欲しいと思い ます。

『日本という国をあなたのものにするために』
(カレル・ヴァン・ウォルフレン著 角川書店発行)

日本には真の首相は存在していない。選挙は儀式である。日本政府は半独立 状態(アメリカの保護国)で、激しい縄張り争いをしている各省庁官僚の集 合体に過ぎない。しかも、その官僚機構には中核がない。日本の官僚機構に は、それを構成するすべての機関をリードし、調整する中枢が存在していな い。いくつも政府があるようなものである。

日本の多難な状況は「山県有朋の遺産」のためである。即ち、日本では、官 僚の権力が、政治家より強すぎる制度になっており、権力のコントロールが きかない。歯止めや政策修正しにくい制度・法律・組織、これが、第二次大 戦への暴走や、現在の日本混迷の根本原因である。

権力はそれをもつ者に物事を正しく判断する能力をむしばませるという一面 がある。権力は傲慢を生み、それが暴走につながって国に大惨事をもたらす ことがある。説明責任によって、傲慢に歯止めをかけることができる。

日本官僚の二大欠点は、無責任(説明しない。責任をとらない。)と、秘密 性(情報を隠す。 失敗を隠す。)の極端さである。

説明責任(アカウンタビリティー)の重要性:
官僚個々人は、有能な人が多いが、問題は官僚が働いている仕組みである。 日本の官僚は説明責任を負わされていない。自分がスタートさせ、自分が続 けてきた政策の結果を鼻先につきつけられることがない。日本の政治の仕組 みには、責任説明の中枢が欠けている。説明責任を政治システムに組み込む ことができれば、本当の民主主義が可能になる。説明責任と成果主義による 信賞必罰・昇進制度の確立が大事。

官僚というものは、本来は日本の国民全体の幸福のために存在するもののは ずだが、各省庁は組織内の人間や組織の立場を守ることに全力を傾ける。彼 らにとって、最も重要なのは、自己組織保存である。外務省職員の公金横領 で、外務省の元次官の一人が、「外務省のために喜んで、身を引く」と語っ ていた。「日本のためにではない。」 官僚は自分の省の利益が即、国益だと 思い込む習慣がある。集団としての自分達が国益を害しているかもしれない とは、思っていない。

日本は通常、一旦ある進路を進み始めたら、このまま行くと国にとってマイ ナスにしかならないと多くの人が思うようになっても、その進路をそのまま 突っ走る。政策は人間が決めたものだということを忘れたようになる。

民主主義とは、政治家を選出し、必要な場合は、その政治家に対して、自分 が決定した政策について、きちんと説明するよう要求していくことだ。市民 から、その政治家へのフィードバックがあることだ。問題解決の方法として 考えられる案のうち、どれが最もよいかを審議することだ。そして、民主主 義は、それを形だけのものに終わらせないためには、選挙と選挙の間にも実 践していかなければならない。そのためには、質問していくことだ。官僚組 織には現状維持という体質があり、針路変更は政治家にしかできない。

政治家が官僚をコントロールした例:
a)小泉首相がハンセン病について控訴しないという決定を下し、官僚の面子 より、患者の利益と人権を優先した事。
b)菅直人元厚生大臣が、エイズ対策の失敗について、厚生官僚を追及、資料 を提出させ、製薬会社より、国民の健康と利益を優先した事。

政治家が官僚から主導権をとり、政策を決定する方法:
a)議員に政策立案スタッフを国費でつける。
アメリカ:上院議員政策秘書50名、下院議員政策秘書25名が国費でつく。 フランス:政治家個人に仕える複数の官僚をもて、その官僚はその政治家についてまわる。
b)事務次官会議を廃止し、真の閣議を行う。
c)国会の各委員会の活性化と公開透明化。

マスメディアには彼ら自身の行動が必要だという認識がないようだ。政治改 革に協力する義務と行動で、公共領域(社会の状態についての真の議論を可 能にする仕組み)をつくる必要がある。日本のマス・メディアは選挙の時に 、もっと政治家の評価をせよ。

日本の市民は、政治家に市民の真の代表になるよう要求する義務を怠ってき た。あなたがよりよい未来を望むなら、あなたは政府がそれを望む手助けを しなければならない。それには、政治家に質問することである。例えば、官 僚に対する政治のコントロールの確立について、政治家に質問する。特定の 利益集団ではなく、一般の人々の利益について、質問する。

重要なのは、市民と統治者との言葉のやりとりが、正しい判断に到達するカギに なる。政治家とマスメディアに手紙やEメールをおくるのである。

小泉首相が誕生し、やっと日本も改革の機運が出てきました。しかし、道は まだまだ遠く、抵抗も激しいでしょう。このまま日本が沈没しては、我々国 民も不幸になってしまいます。

長期的には、個の確立と考える力・発言する力を養う教育が大事ですし、官 僚組織に対する外部チェック制度の制定や、選挙制度の改革、各省の外郭団 体への情報公開法や、国会・委員会・審議会等の活性化・公開化も必要でし ょう。

また、国会議員に30名の政策立案秘書を国費でつけるかわりに、各議員は 毎年最低ひとつ以上の法案提出を義務付ける法律を制定することは如何でし ょう。それぐらいして、やっと官僚組織に対抗し、国会議員が本来の立法活 動ができるようになるのではないでしょうか。

そして何よりもウォルフレン氏が主張するように、政治家やマスコミや官僚 に手紙やEメールを出すということが、我々がすぐ出来ることだと思います 。サイレント・マジョーリティーではなく、選挙の時以外にも声を出してい くことが重要であり、インターネットにより、それが簡単にできるようにな りました。あとは、実行だけではないでしょうか。

最後に、現ブッシュ大統領の就任演説の一部を紹介して、終わりといたしま す。

「国民、それは傍観者のことではありません。それは従属者のことではあり ません。みなさんひとりひとりが国民として責任を果たしてください。奉仕 しあう地域社会を建設し、品性のある国家を建設してください。・・・・・ ・・・私たちひとりひとりが共同社会の一員であるというこの気概ある帰属 意識が失われますと、政府のどのような計画をもってしても、その代わりと はなりえません。共同社会への熱烈な帰属意識があれば、どんな不正も決し て対抗できないのです。」

【坂村真民詩集】

《 あとからくる者のために 》

あとからくる者のために

苦労をするのだ

我慢をするのだ

田を耕し

種を用意しておくのだ

あとからくる者のために

しんみんよお前は

詩を書いておくのだ

あとからくる者のために

山を川を海を

きれいにしておくのだ

あああとからくる者のために

みなそれぞれの力を傾けるのだ

あとからあとから続いてくる

あの可愛い者たちのために

未来を受け継ぐ者たちのために

みな夫々自分で出来る何かをしてゆくのだ

【仏語集】

もし王の重臣であって国家の大計を思わず、ただ自分の利ばかりを求め、賄 賂を取って政道を曲げ、人民の気風を退廃させるならば、人民は互いに相欺 くようになり、強い者は弱い者をしいたげ、貴い者は卑しい者を軽んじ、富 んだ者は貧しい者を欺き、曲がった道理をもって正しいものを曲げることに なるから、災いがいよいよ増長するようになる。

すると忠実な重臣は隠れ退き、心あるものも危害を恐れて沈黙し、ただへつ らう者だけが政権をとって、みだりに公権を用いて私腹を肥やし、民の貧し さは少しも救われないようになる。このようになると、政令は行われなくな り、政道はまったくゆるんでしまう。

このような悪人こそ、民の幸福を奪う盗賊であるから、国家のもっとも大き な悪賊といわなければならない。なぜなら、上を欺き下を乱して、一国の災 いの源となるからである。王はこのような者を、最も厳しく処罰しなければ ならない。(大薩庶尼けん子所説経)

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バックナンバー

第135号 『勝ち組』の構想力

第133号 説得術

第131号 小中学校の不登校

第129号 第24回日本内観学会

第127号 大茶盛

第136号 不登校

第134号 笑顔と涙をありがとう

第132号 拒食症

第130号 見えない自分との決別

第128号 志高く生きる

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