6月7日〜9日まで長野県松本市において、第24回日本内観学会が開催されました。今回は共催という形で、第14回日本心理医療諸学会連合大会も同時に行われ、日本心理医療諸学会の先生方も参加されました。
メインテーマは「心の世紀における癒し(西欧の心理療法と東洋的アプローチの対話と統合を求めて)」でしたが、約150名の出席者の熱心な発表と討論により、その目的は達せられたと思います。今号は、その中から、いくつか皆様にご紹介させていただきます。
(この症例は、多くの方々の目にふれるため、患者の身元がわからないように一部内容を変更したうえで発表されています。)
若い男性であるが、弟の方が学業成績が優秀であったため、両親は自分より弟のほうを愛していると思いながら育った。また、小学生の時、1年間喘息の治療で遠くの養護学校に一人入れられたのを恨みに思っていた。大学浪人の時からパチンコをするようになり、大学に入学したが怠け、マージャン、競馬までするようになった。
大学を中退し、就職したが、ギャンブルや、ちやほやしてくれ、自尊心を満たしてくれるバーに足しげく通い、ますます借金が増えた。このときは親が返済した。肝炎で1年入院したが、退院後また、高級クラブに通い、その借金返済をマージャンとカジノに頼ってさらに借金を増やし、高利貸しからも借り、会社のお金にも手をつけたので、ついに発覚した。(莫大な借金です。)
合計5回の集中内観(1回7日間)を行った。2回目の内観で、他者からしてもらったことへの感謝と自分がかけた迷惑の大きさに気付いた。3回目には、両親に対する偏った思い込みに気付き、4回目に他者のすばらしさ、偉大さに気付き、一方で自己像の変化があり、5回目に自己内面の問題(甘えや逃避、虚飾、自己中心)に気付いた。
何回も内観した結果、最終的に「根本の問題は自分の心の中にあり、両親や弟に対する自分の心が問題だった。」と本人も気付き、立ち直った。現在は結婚し普通に暮らしているそうである。
不満やコンプレックスをどちらへ向けるか。自分をみがき、社会や他人に役立つ方へ向けるのか、あるいは、病的な発散をはかるのか。それによって、人生が大きく変わります。
ある種の有害な行動の繰り返しを嗜癖行動(addictive behavior)という。具体的には、アルコールや薬物、食べもの(過食症、拒食症)、ギャンブル、買い物、仕事中毒、強度のTVウォッチング、性倒錯、窃盗、放火、恋愛嗜癖や共依存などである。
本人はもちろん病人なのであるが、「共依存症者(Co−Dependent)」と呼ばれる存在がある。よく説明のひきあいに出されるのが、アルコール依存症者の妻が共依存症者である例である。
「この人は私がいないとダメなのだ。」と世話をやきすぎて、かえって夫を駄目にし、また、妻自身もさらに夫の面倒をみなくてはならないという悪循環にはまり込んでしまっている関係を共依存関係という。
同様に、3才の幼子を母親が面倒をみるのはごく自然なことなのであるが、30才過ぎの心身ともに五体満足な息子を親があまりにも面倒を見すぎるというのは、共依存の疑いがある。成人となった我が子を抱え込むことによって退行させ、引きこもりや家庭内暴力を生じさせるような親と子の関係が、この頃日本でもよくおこっている。
このようなケースの場合、祖父母から始まって、家族全体に問題の根を抱えている場合が多い。一人だけ治癒しても、家庭に戻ると再発したり、あるいは、他の人が病気になったりする場合もある。このため、家族全員の治療が必要であり、共依存者の場合、ガミガミ言い過ぎたり、世話をやきすぎたりするのではなく、自分自身の幸せを求める方向へ、つまり、他のことへ意識を向けた方がよいことに気付かせる必要があるということであった。
内観とは、「してもらった事」「して返した事」「迷惑かけた事」を調べ、相手中心に自分を深く見つめることです。日常生活の中で、どれぐらい内観的な見方・行動ができるか、自分に日々、課題をだしてみてください。例えば、
1)1日に10回は「ありがとう」という。(お世話になっている事や物を探す。)
2)はだしで歩いてみた後、靴に有難うと言う。
3)両親が私に使ったお金の計算をする。私が両親に払ったお金を計算をし、比較する。
4)今まで自分のやった事を3つ:誰の助けでできたのか。(何人でも)
5)シチュエイション内観:今誰のお蔭で勉強や仕事ができるのか。
6)ゴミ内観:ゴミを捨てる前に「有難う」と言う。
7)自分の体の一部分にたいする内観をする。
8)イベント内観:卒業した時、誕生日、試合に勝った時、等。
9)トイレでどれぐらい「ありがとう」という言葉がでるか。
10)今日一日朝起きてから夜寝るまで、世話になった物や人を数え上げる。
11)憎しみ内観:一番憎い人に対して内観する。
12)太陽や空気や水に対して、内観する。
吉本伊信先生の始められた内観は多くの人を救い、また内観療法として医療にも、また社員研修にも使われ、世界中に広まっています。内観について詳しく知りたい方は、『人生が楽しくなる内観』 をご覧ください。体験感想文や各地の内観研修所・病院のリストが掲載されています。合掌
心は抑え難く、軽く立ち騒いでととのえ難い。この心をととのえてこそ、安 らかさが得られる。
怨みを抱く人のなすことよりも、かたきのなす悪よりも、この心は、人に悪 事をなす。
この心を貪(むさぼ)りから守り、瞋(いか)りから守り、あらゆる悪事か ら守る人に、まことの安らかさが得られる。(無量寿経)
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