2002年9月25日第172号
幸福ニュース

【 父母兄(20才女性) 】

 『内観』とは、身近な人々(母または母親代わりに育ててくれた人、父、配偶者など)に対する自分を見つめるために、(1)していただいたこと、(2)してさしあげたこと、(3)迷惑をかけたこと、について、具体的な事実を過去から現在まで調ベる方法です。

 内観は新しい自己を発見し、人生をリフレッシュする自己開発の方法として役立っています。また、社員研修や、非行、不登校、夫婦・嫁姑の不和、心身症、摂食障害、アルコール依存症など心のトラブルに対する心理療法としての価値が認められています。

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 一週間内観を体験させていただきました。まず、母に対しての自分を二回調べました。「していただいたこと」「迷惑をおかけしたこと」はたくさんあるはずなのに、具体的に出てきませんでした。雰囲気や映像が漠然と頭の中で回っていました。

 それでもやるしかないと思ったので、その映像一つ一つを丁寧に見ていくことにし、調べてみたところ、私の心の中に、「私の為にいろいろしてくれて当たり前」ということや、「私の言っていることは間違っていない。お母さんが間違っている。」というとんでもない気持があり、このことが具体的に出てこない理由の一つであること、また、迷惑をおかけしたことの中に一番入ることに気がつきました。

 次に、二回、父についての自分を調べましたが、やはり具体的に出てこないのです。また、何か理由があるかもしれないと思いながら、内観を進めていきました。

 怒ると鬼のようにこわい父ですが、いつも優しく、黙って私のことを見守り応援してくれ、いつでも私の声に耳を傾けてくださる父に、日頃から感謝している気持が私にはなかったような気がします。都合のいい時ばかり父の優しさを求めていた自分がなさけなくて仕方がありません。

 私がここまで成長したのは、父が一生懸命働き、母が作ったご飯を食べ、大学まで出してもらい、色々な経験をさせていただいたからです。

 普通の生活で、ごく単純に見えることの中に、たくさんの「していただき」や「ご迷惑」が潜んでおり、そのことに気付きもしないで、自己流に生きてきたことを今反省しています。

 次は兄について調べました。兄は障害を持っており、言葉がでないので、3項目のことは考えにくいと思い、面接のときにお坊さんに相談しました。すると、「人間はたいてい氷山で例えると、ほんの上の部分(人間の表面)しか見えておらず、内観をすることで深い部分まで見えてきます。お兄さんは言葉はでなくとも、生きていらっしゃるわけだから、考えにくくても、一つ一つ丁寧に見ていくとどうでしょうか。」と、アドバイスしてくださいました。

 丁寧に見ていくと、私自身が、兄に対して嫌だと思っていたことが、実は私にしていただいたことにつながっていることに初めて気がつきました。人間としてあるべき姿を兄は言葉ではなく、体全体で心で、私に教えてくださっていました。

 私のほうが、兄にしていただいたこと、迷惑をかけたことが多く、今まで兄にしてあげたことの方が多いと思っていた自分が恥ずかしくてなりません。

 一週間の内観を通して、「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉の重みを感じました。誰かに何かしていただいた時は「ありがとう」と言うし、迷惑をかけた時は、「ごめんなさい」と言い、して返した時に「ありがとう」と言われると、とても気持がいいと思います。

 私は、言葉の重みを無視し、ただ口先だけで、「ありがとう」や「ごめんなさい」を使っていたような気がします。たった、五字、六字の言葉ですが、この言葉を本当の意味、重みを理解して使うには、まず、相手の気持になってみて、初めて使える言葉だと思いました。

 一週間の内観中、毎日心のこもった食事を作ってくださった方々、食べ終わった食器をさげてくださった方々、お風呂の準備をしてくださった方々、面接や毎日のお参りでたくさんのことを教えてくださった僧侶の方々、その他、色々なお世話をしてくださった方々に、心から感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

【坂村真民詩集】

《 二度とない人生だから 》

二度とない人生だから
一輪の花にも
無限の愛をそそいでゆこう
一羽の鳥の声にも
無心の耳をかたむけてゆこう

二度とない人生だから
一匹のこおろぎでも
ふみころさないようこ
こころしてゆこう
どんなにかよろこぶことだろう

二度とない人生だから
一ぺんでも多く便りをしよう
返事は必ず書くことにしよう

二度とない人生だから
まず一番身近な者たちに
できるだけのことをしよう
貧しいけれど
こころ豊かに接してゆこう

二度とない人生だから
つゆくさのつゆにも
めぐりあいのふしぎを思い
足をとどめてみつめてゆこう

二度とない人生だから
のぼる日 しずむ日
まるい月 かけてゆく月
四季それぞれの星星の光にふれて
わがこころをあらいきよめてゆこう

二度とない人生だから
戦争のない世の実現に努力し
そういう詩を一篇でも多く作ってゆこう
わたしが死んだら
あとをついでくれる若い人たちのために
この大願を書きつづけてゆこう

【仏語集】

 世に無財の七施とよばれるものがある。財なき者にもなし得る七種の布施行のことである。

一には身施、肉体による奉仕である。
二には心施、他人や他の存在に対する思いやりの心である。
三には眼施、やさしきまなざしであり、そこに居るすべての人の心がなごやかになる。
四には和顔施、柔和な笑顔を絶やさないことである。
五には言施、思いやりのこもったあたたかい言葉をかけることである。
六にはしょう座施、自分の席をゆずることである。
七には房舎施、わが家を一夜の宿に貸すことである。

 以上の七施ならば、だれにでも出来ることであり、日常生活の中で行えることばかりなのである。(雑宝蔵経)

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第169号 ご先祖様から見た私

第167号 自己とは何か

第165号 クリスチャンの内観

第163号 母と弟と私

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第168号 自己を自覚する

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