2004年2月5日第221号
幸福ニュース

【 父との和解(男性25才)】

 私の内観との出会いは、事件を起こして留置所から帰ってきた日でした。ただ、漠然と父に勧められて、自分を見つめなおして来いと言われ、自分でも行き詰まっていたような気がしていたので、行こうと思いここに来ました。

 まずは、母について考えていたところ、何を考え、何を話せばいいのか分からず、覚えていないとか、あやふやな答えだった様な気がします。具体的にと突っ込まれて、話がつまったりしていました。

 何回か面接が行われるにつれてだんだん不安になっていました。そんな時にテープが流れてきました。他の人が内観されている時のものでした。それを聞きながら、自分は何も気付いていなかった。母におきかえての自分というのを何も考えていなかったし、自分は自分はと言っていて、母の事なんかまったく考えていなかった様に思いました。

 その事に気付かせて頂いてからの内観は、自分でもびっくりするくらい、頭の中に母の事が鮮明に浮かび上がってきました。まず、産んでくれたこと、一日にひとつ寝る前に物語を読んでくださっていた事、しつけをして下さった事など、見方を変えるだけで、たくさんの事が思い出されてきました。

 一番母に対してお世話になったり、迷惑をかけていたのは、中学に入ってからの2年間と高校2年からの自分だったと思います。中学時代は、バイクで事件をおこしたり、夜出歩いて補導されたり、言う事はまったく聞こうとしなかった自分でした。それなのに母はやさしかったし、暖かい言葉をかけてくれていました。

 高校2年からの自分は、何の目標も持たず、ただ毎日が過ぎていっていました。高校も退学になり、行き場がなくなった自分は、家から逃げ出していました。そんな時でも母とだけは連絡をとり、お金をもらったり、やさしい言葉をかけて頂いていた様に思います。母が陰でささえてくれていなかったなら、今の自分はなかったと思います。

 内観3日目で父に対する自分を考えていて、ちょうど終盤に、父がここに来て話をしているのを聞いてしまいました。その時は一生懸命に内観をしていましたので、自分の中に雑念が入って頭の中が真っ白になりました。

 次に頭の中に入ってきたのは、父にされた自分にとっていやだった事が、走馬灯のように頭の中をかけめぐり、何も考えられなくなりました。その時に、自分で何とか雑念を取り払おうとしたのですが、その日は無理でした。

 次の日は、先生とお話させていただいて、「せっかく来られたのだから、父にたいしての自分を考えるのはまた後回しにして、妻に対して考えてみたらどうでしょう。」と言われ、自分でも幾分か楽になった気持ちになり、内観を続けることができました。

 妻が終り、母に対する2回目の内観が終わった後の、父に対する内観は、スムーズに入っていけました。父から逃げていた時の自分がいました。父になぐられるとか、怒られるとか、勝手に自分で思っていたという事に気がつきました。初めから父に相談していればとか、母に背中を押されたり、間に入ってもらったりしていた時に、向き合っていればと悔やんでいます。

 事前に何の相談もなしに色々な事が起こるものですから、「こいつは、何を考えているかわからない」ということになるのでしょうし、自分が父を振り回していたと思います。父からしたら、なぐるのも怒るのも愛情だったと思います。あえて突き放された時も、自分を信じていてくれたから、受け入れてくれたんだと今は思います。

 そして、色々悪い事をし、迷惑をかけたにもかかわらず、父はたくさん面倒をみてくれたことに気付きました。私は逆恨みをしていたのです。

 妻に対して考えていると、世話になりっぱなしの様に思いました。自分は仕事から帰ると、やれ焼酎つくれだの、メシまだかとか、自分の言い分しか言っていなかったように思います。これからは、優しい言葉のひとつでもかけられるようになっていきます。

 最後になりますが、この内観は、自分にとっていい出会いだと思いました。人に対しての自分を考えている時に、生汗が出てきた時もありました。頭に浮かんでくる事が多かったり、あまりに恥ずかしい自分に出会った時でした。

 これを機に、家庭でも内観を続けていき、謙虚な気持ちを持って頑張っていこうと思います。ありがとうございました。

【坂村真民詩集】

《 善と悪 》

人間の性を

善と見るか

悪と見るか

地球の性を

善と見るか

悪と見るか

これは人間の存在する限り

地球の存在する限り

決められないだろう

ただどちら側につくか

その違いは大きい

わたしは人間も地球も

性は善と見て

毎暁額をつけて祈っている

地球の願いに声を合わせて祈っている

【仏語集】

仏を信ずる者も、我の思いに立つ時は、貪(むさぼ)りと瞋(いか)りと愚かさの心から、他人をそねみ、ねたみ、にくみ、損なったりする。しかし、仏に帰ると、大きな仏の仕事をするようになる。これはまことに不可思議と言わなければならない。(大般涅槃経)

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