寒い中、素晴らしい内観をされた方がいらっしゃいましたので、皆様にその感想文をご紹介させていただきます。このご婦人は、娘さんが病気による出勤拒否状態になり、そのことで悩まれ、当寺に内観に来られました。
幼くして、母、次いで父をなくされ、継母ともうまくいかず、祖父母に育てられました。結婚しましたが、ご主人の事業がうまくいかず、このご婦人が実質的に家計をささえてきました。一時、ご主人とも別居状態になったこともあり、家庭的にも大変な人生を背負ってこられた方です。
最初は、『娘の病気で悩んでいるのに、何で私がこんな所で内観をしなくてはならないのか。』と思っておられたそうです。
そして途中までは、『主人からしてもらったことは何もない。あの人のことを考えると胸がイライラ、ムカムカする。』とおしゃっておられました。
けれども、5日目の木曜日の午後、『してもらったことがありました。車を洗ってもらっていたことを思い出しました。』と言われ、それから別人のような深い内観になりました。
私は娘の病気の為、内観を知り、真剣勝負の心で仕事を忘れ参りました。
始めに母、次に父を調べました。短い両親との生涯でしたが、して頂いたことが、こんなに深い愛情をもらっていたのでしょうか。幼い時で、何も返していないことを知りました。
育てて頂いた祖父母が私にとって偉大であったこと、主人、娘に対しての自分をこのように一週間も調べてやっとわかった気持ちです。屏風の中の自分を嘘いつわりなしに出し切れたようです。とりとめのつかない私の話を先生方が真剣にお聞きくださる姿勢が有り難く心が洗われたようです。
主人を責めている自分がみにくく、何度かわろうと思ったことか。そのために講演を聞き回り、えらい人の本を読み、ある会の指導も何回も受けました。でも我が家に帰り、主人の顔を見たら元のもくあみ状態。『ふがいない人だ。力のない人だ。』と悪い方ばっかり見つけていた自分に気付かせて頂きました。
主人は我慢強い心の優しい広い男性でしたからこそ、この年までいてくださったと思いました。
娘に対しても、この親を見ていたから大変な病気になったのではないでしょうか。せっかく良い子に生まれておりながら、母のいたらなさで長年苦しめてきたと思います。
苦しんでいる娘の姿はかっての主人の苦しみです。子供の苦しみは、自分が火に入るより心が熱く痛み焼けております。かわってやれない悔しさは、天は私を苦しませて下さっております。内観を早く知っておけば、家族に何十年も苦労させなかったのではと考えます。
妹の紹介のお蔭で、これからの生き方が変わると思います。あとわずかの人生をぜったいに変えて生きていきます。第一に反省、感謝、奉仕を忘れることなく、毎日夜自分なりの内観をさせていただきます。この内観を無駄にしてはもったいないと思います。
面接をして下さった僧侶の方々や、毎日食事を作って下さった女性の方々に感謝して、一週間を過ごさせて頂きました。
このように素晴らしい蓮華院を知り、内観の意味を知ったことは、私の人生にとって大きな宝物です。このような宝物を生かして大切にしたいと思います。上の空で生きてきました。今までとは違う自分を自然体にしていかなければ、本当に申し訳ないと思いました。
今日家に帰りましたら、主人に今までの私をわびます。夫婦そろって般若心経を覚えたいと思います。主人を苦しめたことに対して、一週間のわびでは申し訳ありませんが、般若心経を通してこれからの人生を送りたいと思います。
後先になりましたけど、この内観のありがたかったことは忘れません。テープを聞いたことも忘れることができません。このように感謝できる自分がまだ残っていたことに気付かせて頂きましたことに、心から有難うございましたと云う私の本心でございました。
言葉は『有難うございました。』の一言でも、感謝を知り、今は主人に『ありがとうございました。』と言えます。(終)
世は常に燃えている。貪(むさぼ)りと瞋(いか)りと愚かさの火に燃えている。この火の宅(いえ)から、一刻も早く逃げ出さなければならない。(法句経)
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