私が内観という言葉を初めて聞いたのは、現在務めている病院との出会いからでした。患者様方の体験発表や院長先生の話をお聞きして、私は内観にとても興味を持ちました。
そして、自分も是非体験してみたいと、いつかしら思うようになっていました。研修に行かせてもらうことになった時、内観によって自分がどう変わるんだろう、どんな自分に変身するんだろう・・・と少々ワクワク気分で参加しました。
初日は15時から、内観についての説明や注意事項等のオリエンテーションを受け、心理テストがあり、17時から内観を始めました。途中、入浴、夕食を取り、21時の消灯まで、母について調べてみましたが、やり方が良く分からず、ただ思い出に浸っている感じでした。
2日目も引き続き母について調べていくうち、リウマチの病気持ちだった母の曲がったり固まったりしている手足で、足を引きずりながら、家事や縫い物、畑仕事をしている母の姿が観えてきました。すると幼い頃の自分や兄弟、母、懐かしさと安らぎ感で胸が熱くなったのです。
面接の先生が来られ、「誰に対する、いつからいつまでの自分を調べましたか?」と聞かれ、答えたんですが、先生に「思い出話ですね。」と言われ、自分でも「本当だ。思い出だ。」と思いました。私の母は、私が30才の時死んでいます。あれから24年もたっていますので、私にとっては思い出しかないのだと思いなながらも調べていくうちに、お世話になった事が次々に観えてきました。
まず、あの身体(身体障害者2級)で私を無事産んでくれた事、曲がった手指で七草祝いの着物を縫ってくれた事、お世話になった事の多い事、多い事。それに比べて、して返した事は全くないのです。
病気もちの母の手伝いをたくさんして助けていた、して返している。私だって幼い頃から頑張って、家事や妹や弟の面倒を見てやり、畑仕事までしてたんだ・・・と思っていた自分。でも、内観が深くなると、それはすべて自分の為、自分も食べて生きていく為していたのだ。また、あの頃の家庭の事情や状況でやっていた事が、経験として今の自分に役立っている事に気付きました。迷惑や心配かけた事も忘れていました。
3日目は父について調べましたが、父についても母と同じで、思い出から入っていました。私の父は32年前に死んでおります。父は大工をしていましたが、アルコール依存症でした。飲むと暴力をふるうので、「夜になると地獄だ」と母が言っていました。母や祖父母、私達兄弟は、この父にどれだけのつらい思いや苦労をさせられた事か。でも、飲んだ時だけだったのです。
いつもは子供好きでやさしい父でした。子供心に父を変えてしまう酒が憎くて、「何でこんな物があるのか。誰が作ったのか。気違い水じゃないか。」と思い、泣いた事があります。
正月になると、父の手作りの羽子板、駒、タコ、下駄、また庭先には木馬やブランコ、友達もうらやましがる程でした。
しかし、父の稼ぎは酒代に消え、生活は山や畑を売り、母の着物を質に入れ、食いつないでいましたが、その金も酒代に取られることもありました。経済苦で高校に行けなかった私や兄達、でもそのお蔭で、今こうして看護師をしています。
今の自分があるのは、父がアルコール依存症という病気だった事に気付きました。父の病気に感謝する気持ちになると、つらい思い出や苦労した事が、楽しかった思い出になり、嬉しくなりました。父に対しても、してもらう事ばかりで、して返した事にならないのです。
母と父を2回ずつ内観し、残り一日半は祖母と兄について調べましたが、誰に対しても同じで、自分がどれだけたくさんの無償の愛に包まれ、生かされているのか、内観により気付かされ、すべての人や物に感謝する気持ちになっています。
内観中、面接の先生が毎回私に対し合掌され、深々と礼拝されます。私は「何故そのようになさるんですか?」と聞いてみました。先生は、「あなたの仏性(仏の種)に礼拝させて頂いているのです。」とおっしゃいました。
私は、自分の内観が浅い時、「私の種はどうなっているんだろう。芽が出ない。腐ってるんじゃないか。」と思いながら続けていました。深くなると感謝の気持ちと詫びの念で涙が溢れてくるのです。私の仏性は水を待っていたのです。涙水をもらい、種が芽を出しました。先生は私の仏性に「どうぞ芽を出して下さい・・・」と念じてあのようにして下さったのだと気付き、先生にも感謝です。
数年前何かの本で、心の成長は体の成長と違って大きくなる事ではなく、深くより透明になる事だ・・・との文章を目にしました。それ以来、「深く透明になるとはどういう事なのだろう?」と、私はずーっとその答えを探していましたが、今回の内観で見つけました。『内観』なのです。深く、より深くなると透明になるんです、きっと・・・、私はそう実感しました。
四年ほど前から訳がありまして、今日一日の無事と反省、感謝を込めて、朝晩仏様に手を合わせている私ですが、これからは、今までよりも深い気持ちで、日常内観として続けていこうと思っております。今回私にこのような体験をさせて下さったすべての方々にお礼を申し上げますとともに、蓮華院誕生寺様との御縁を心から感謝致します。本当にありがとうございました。
まことにこの世界は、一方から見れば、悪魔の領土であり、欲の世界であり、血の戦いの場ではあるが、この世界において、仏のさとりを信じる者は、この世を汚す血を乳とし、欲を慈に代え、この世を悪魔の手から奪い取って、仏の国となそうとする。(大般涅槃経)
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