このたびは、夫婦で集中内観をうける事になり、お寺の２階の部屋に皆で集まった時には、私どものような年配者はいなく、私達の子供の年齢ぐらいの若者ばかりで、どうなる事やらと少し心配になりました。子供を先に内観を受けさせた手前、親として少しでも近づける会話ができるようにと参加した次第です。
さて、内観に入ってみると、半畳そこそこの場所に座布団一つ、「何これ」って感じでした。私は、失礼ながら、腰痛の為イスに座って内観をさせて頂きました。
初日は窮屈で、屏風が倒れてきそうでとかで終り、２日目は「何だこんなものか」という気持ち、また、食事の時のテープを聞いていても、「フーンなるほど」と思える程度でした。
それでも、無理矢理座って内観を進めていると、４日目の時、ああこれでようやく昼メシだと思い、いつもの様にテープを聞きながら食事をしていたところ、突然食べていた物を吐きそうになり、なぜか涙がでて、とまりませんでした。
昨日までは他人事のように聞いていたテープが、今日は腹の奥底につきささり、他人でなく、我事の出来事と重ねて考える自分に驚き、このように物事を考え感じていくのかと思い、今までは、内観研修費の５万円ももったいない事をした、これからは真剣に内観をやってみようと決め、母８０才の二度目の内観を始めました。
自分が生まれてから、小学校、中学校、高等学校、あの貧しい中、８人家族の中で何一つ不自由なく、また、兄弟の中で、私一人が高校まで出させていただき、本当にありがたく思っています。また、高校を卒業した年に父が亡くなり、母親一人で姉を嫁がせ、私を結婚までさせてくださいました。その母に対して、してさしあげた事はまったくなく、感謝でいっぱいです。
結婚後は、孫の誕生いらい、心配事があるたびに、お地蔵様にお願いに行っていただいたり、私のお店に毎日掃除をしに来ていただいています。
時には、私ども夫婦喧嘩の原因ともなりますが、誰が孫の為に病院の付き添いや、手の痛いにもかかわらず菜の花を取ってきたり、雨の日も雪の日も、手を真っ赤にはらしながら、洗濯物を干してくれますか。残りわずかな人生を毎日が幸せと言えるようにしてあげたいと思います。
妻への内観は３〜４回しました。そのつど色々な事がわかりました。私達夫婦はよく喧嘩をしました。そのほとんどは、子供の事、ばあちゃんの事。でも、それを私は一方的に有無を言わさず、どなり、怒り、時には暴力、いや喧嘩の半分は、暴力をふるった様に思います。
子供にもようしゃしませんでした。さも自分を正当化し、理屈をならべ、憎しみのまじった言葉で非難をし、相手が傷つくまで、激しい口調で吐き捨てるのです。それを見ていた子供達の気持ちはどうだったでしょう。愛情のかけらもない夫婦、妻が離婚を言葉にするのも当たり前かもしれません。
その時、相手の気持ちを考え、いやそんな大げさな事ではなく、相手の話を聞き、理解してやり、もっと優しく接する事ができていれば、娘も病気にならず、楽しい大学時代を送れたと思うと残念でなりません。次男も違ったすばらしい人生があったと思い、申し訳なく思っています。これが私の精一杯の後悔と謝罪の言葉です。涙があふれて止まりません。
人生やり直せるなら、もう一度、この妻、この長男、この長女、この次男と暮したい。最後になりましたが、先生方、台所の女性の方々、大変お世話になりました。ここでの体験は一生忘れません。本当にありがとうございました。（終）
