2004年12月4日第249号
幸福ニュース

【 「人口減少経済」ー縮む世界ー(3) 】

 今回で最終回ですが、松谷明彦著『「人口減少経済」の新しい公式』(日本経済新聞社)を皆様に紹介させていただきます。2010年ごろより、日本経済は転換点を迎え、特に会社経営は今までと全く異なる経営方針が必要となるようです。少しかたいですが、今後の日本人にとって必読の書だと思います。

    

『「人口減少経済」の新しい公式』
           ー「縮む世界」の発想とシステムー(その3)

39)終身雇用と年功賃金制は崩壊する。かわりに付加価値への貢献度に応じて決まる賃金になる。個々の労働者の所得格差は大きくひろがることとなるだろう。スペシャリティーに基づく賃金体系を基本とした雇用制度になり、転職による不利もなくなことにより、人材の流動化がすすむことが予想される。

40)ライフスタイルの多様化により、労働者の人口は分散する。高齢者はサービスのよい都市部を選択する人が増加するだろう。地方地域でも都市部への人口集中が進み、過疎地はますます過疎化するだろう。

41)金融システムは、銀行を整理縮小し、貸付市場を現在より縮小させ、株式市場を通じての資金調達の拡大をはかった方が、収益率の大きい健全な企業が多くなり、貯蓄の有効活用を通じて国民生活水準を向上させるだろう。

42)人口減少経済においては、技術開発力の向上が飛躍的に重要となる。人口の減少高齢化が日本経済にもたらす最大の問題点の一つは競争力の低下であり、技術開発力の向上は、日本経済を持続可能とするための至上命題である。そのためには、優秀な外国人の活用を図る、世界に向かって開かれた研究開発体制に変革する必要がある。また、それは日本人研究者にとっては競争の激化を意味するが、今後は、世界中の資金と人材を集める事のできる国が繁栄するだろう。

43)それから、現在のような総花的な研究開発体制ではなく、今後日本に残すべき、また、育てるべき産業分野を絞り込んで、研究開発もその分野に絞り込むべきであろう。その場合、育てるべき分野は最終的には市場に委ねた方が良い結果を生むだろう。今までの実績から見て、政府の役割を過大評価すべきではない。

44)終身雇用制の崩壊により、労働者も流動化するので、今後、企業内の意思疎通に要するコスト、即ちコミュニケーション・コスト(精緻なマニュアルや詳細な指図書、その伝達手段にようするコストなど)は増大するだろう。

45)終身雇用・年功賃金制の日本企業にあっては、生産管理は従業員の忠誠心に依存する形で進められてきた。しかし、終身雇用制が崩壊すると、今後日本企業は新たな生産管理手法の開発を迫られることになる。どのようにして労働者の意欲を高め、最小のコストで最高の品質を確保するかという、欧米の企業が頭を悩ます問題にこれから日本企業も直面するだろう。

46)設備投資へのリスクを抑えるために、生産設備にかかるリース事業は今後拡大するだろう。(人口減少経済での経営基本方針は、スリム化と絞込みと収益性重視)

47)地域地方経済にとっては、大都市経済圏依存から脱却し自立するために、地域としての固有の産業や企業を持つことこそが重要となる。地域間における明確な分業関係をつないだ地方広域経済圏の形成も一つの重要な解決法であろう。公共事業をいたずらに拡大することは、国民所得を低下させ、過去の失敗にみられたように地方地域の順調な発展を阻害する。

48)都市の収支は今後確実に悪化し、大都市ほど著しい。都市の老朽化やスラム化の危険がある。

49)ライフスタイルは多様化する。一つのタイプはスぺシャリティを身につけ、より良い所得を目指す上昇指向のタイプである。もうひとつは、必要な時だけ働く、「働かない自由」を謳歌しようとするタイプである。ただし、このタイプを選択するのであれば、生活のスリム化を図る必要がある。モノから得られる幸福ではなく、自由な時間がもたらす幸福を追求しようとするタイプである。この二つのタイプの間に様々なライフスタイルがあるだろう。

50)年金制度は縮小の方向に向かわざるを得ない。年金を軸とした老後の生活設計も変化を余儀なくされ、老後もまた自己責任ということになる。また、余暇時間は確実に増加する。

51)就業形態の多様化は競争というものを変質させる。受験競争は確実に緩和する。これからはスペシャリティーに基づく賃金体系と人材登用というシステムになるので、ひとつのフィールドで1回ではなく、いくつものフィールドで何回も競争が行われるようになるだろう。人々は自分の得意分野で勝負することができ、多くの人にとってチャンスは拡大するし、敗者復活戦の機会も増えることになる。ただし、賃金格差は広がるだろう。

52)今後の日本経済は、もはや国民全員に「今日よりも明日は必ず良くなる」という夢を与えることはできない。従って、今後日本経済を核とする限りは、社会の求心力は低下するだろうし、そのなかで「国民みんな」という考え方も希薄になっていくだろう。余暇時間も増加するので、必然的に「個人」を重視する考え方が強まる事が予想される。これからは、多様な価値観を持つ人々が、「個人」を大切にしたうえで結びついていくような社会に変貌していくのではないだろうか。これからは、国民という意識に代わって「住民」という意識が重要になるだろう。

53)人口減少経済の共通項は「多様化」である。多様な経済行動、ライフスタイルの多様化、就業形態の多様化、余暇の多様化、企業の多様化、製品・サービスの多様化、地方経済の多様化、都市の多様化、行政手法の多様化であり、小さな政府こそ人口減少経済を豊かな社会にするために望ましいと言える。人口減少社会では、総じて個人が豊かな生活を営める可能性が高くなるだろう。(終)

【坂村真民詩集】

《 朴の花のように 》

信ずることのできる人を

一人持つということは

幸せのなかの最大の幸せだ

世の中がどんなに変わろうと

変わらない人を持つことの喜び

朴の花のように今も慈悲に満ち

生きていますゴータマ・ブッダ

【仏語集】

 まことに、人の生まれることは難く、教えを聞くことも難く、信を得ることはさらに難い。だから、努め励んで、教えを聞かなければならない。(無量寿経)

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第245号 女性社長の内観

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第241号 高校生の内観

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第248号 自殺未遂者の内観

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