今回は、松谷明彦著『「人口減少経済」の新しい公式』(日本経済新聞社)を皆様に紹介させていただきます。これから、日本は高齢化と人口減少が急速に進むわけですが、個々の生活や企業経営においても、従来とは全く違ってきます。今後の日本人にとって必読の著です。
1.急激な日本の人口減少と高齢化が始まっている。(半世紀で4000万人の人口減少)
2000年 1億2550万人
2030年 1億 790万人
2050年 8480万人
2.今後、日本の人口の減少高齢化は、世界一急激なスピードで進展する。我々はその激変を受け入れ、生活設計や経営方式、政策理念を根本から再構築する必要にせまられている。変化は加速度的に進行するので、対症療法ではたちまち行き詰まるだろう。中長期的な視点に立ったシステマティックな再構築こそが求められており、残された時間はさほどない。
3.社会に対しても、人々はこれまでのようには依存できなくなっている。人口の高齢化によって年金も健康保険も縮小した。財政サービスもかってのような大盤振る舞いではなくなった。人々は自分自身で各々の生涯を設計し、それに基づき消費と貯蓄、労働と余暇の計画的な配分を心がけるという新たなライフスタイルへと進みだしている。
4.日本の生産年齢人口の大幅な減少により、日本の経済成長率が主要先進国の中では最も低くなる。労働力の縮小による賃金総額の縮小によって、需要が縮小し、マイナス成長になるのである。今後の人口の減少高齢化は、日本経済の成長率を大幅に低下させるだけでなく、経済を縮小に向かわせる。成長率が恒常的にマイナスとなるのである。
5.今後の日本経済は、日本経済が縮む時には、それに合わせて企業規模を縮小し、売上高ではなく、付加価値率の向上を経営目標とすべきである。
6.今後の30年間で、労働力は3分の2に減少する。経営環境は拡大から縮小へ激変する。日本全体として見ると、外国人労働者の活用は国債に似ていて、負担が後世代に移転される。
7.これまでの日本経済においては労働力と需要は上昇の一途であったため、多少強気の設備投資でもよかった。現在日本経済は山の頂上付近にあり、これからは、低下する一方である。
8.「人口減少経済」においては需要が傾向的に縮小するので、遊休設備は増える一方であり、生産能力の早めの計画的縮小が必要になってくる。成長市場以外は、スリム化が企業経営の基本である。
9.生産設備の廃棄については、現在稼動中の機械を廃棄するほかに、耐用年数が到来した機械の更新を行わないという方法もある。今後は特に機械の年齢構成を考えた設備投資計画を立てる必要がある。
10.利益率を高め、内部留保を充実させることによって、見通しと現実のずれのリスクへ対処することも必要であるが、基本的には生産能力は「縮小」が経営の基本である。
11.しかし、賃金を抑制すると、総需要も抑制され、デフレスパイラルという悪循環に陥る。今までの日本の労働分配率は先進諸外国の中でも悪く、日本企業の第一の経営課題である。従って、今後の日本企業は薄利多売による売上高の増大より、付加価値率の増大、利益率の増加を第一の目標とすべきだろう。
12.経済には「貯蓄・投資バランス」という自立的メカニズムがあり、個人、企業、政府の貯蓄総合計(国民貯蓄)が、設備投資、公共投資、住宅投資、純輸出の総合計(総投資)に等しくなるように、経済自身が規模を調節する。
13.このため、投資に比べて貯蓄が多いと経済は縮小する「貯蓄超過」の状態に陥る。この観点からも、付加価値を賃金と企業利益に適切に配分することは必要である。人口減少経済においてデフレスパイラルが発生したとすれば、それは人口増加経済に比べてはるかに深刻であり、はるかに長期にわたるであろう。
14.今後の企業経営において心掛けるべきことは、『スリム化』であり、「適切な生産量」「効率的な生産」「適切な賃金水準」の三つである。それらを守る限り「人口減少経済」は少しも恐くない。そして同時に企業がそれらを守ることが国民所得を最大とし、デフレスパイラルを防ぎ、国民生活を引き続き豊かなものとする。
15.人口減少経済において売上高や経済成長を追求するのは愚かなことと言わざるを得ないが、国民所得の最大化は目標としたほうが日本経済全体のためには良い。
16.発想の転換とシステム全般にわたる大幅な変更が必要とされる。縮小のもとでの豊かさとはいかなるものなのか。そしてその豊かさはいかなる基盤のもとで生まれるのか。それを日本人の誰もが自らに問う事こそが今求められているのであり、それが発想の転換とシステムの変革につながる。(続く)
心よ、おまえが、すべてのものはみな実体がなく、うつり変わると知って、執着することなく、何ものもわがものと思うことがなく、貪(むさぼ)り、瞋(いか)り、愚かさを離れさえすれば、安らかになるのである。(パーリ、長老偈註)
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