きっかけは、知人が内観をして良かった話を聞いたからだ。特 に大きな悩みを抱えていた訳でもなかったが、仕事も一段落し、 家庭を持つことを真剣に考え出した時だったので、内観を受ける ことにした。

　初日、二日目と母親に対する自分を調べたが、一向に深く内観 することが出来ず、正直あと６日は持たないと感じた。しかし、 父親の内観を始めた３日目ぐらいからは、今まで気付いていなか った点に関して、気付かされる点が多くなっていった。

　まず、私がどれだけのお金を使ってきたかをきちんと考えたの は、今回が初めてだったので、額の大きさに驚いた。私が平均より幾分か恵まれた家庭で育ったのは自覚していたつもりだったが、全く分かっておらず、いかに私が中途半端に塾や習い事に通い、無駄遣いをしていたかを知り、愕然とした。

　経済的に退職後も自立している親への孝行は、私が子供を持っ た時に親からしてもらった事と同程度の事をすればよいと思って いたが、そのための貯金など全くしておらず、果たしてできるの だろうかと不安になり、私の考えの甘さに気が付いた。

　また、大学院の時に奨学金を貰い、入学金、授業料は私が払っ たと自負していたが、浅はかな考えで、誇らしげに思っていた私 が心底嫌になった。

　父親に対しても、医者の仕事しかしないと思っていたが、釣り に連れて行ってもらったり、ミュージカルに連れていってもらっ たりしており、いろんな引き出しを持ったおもしろい父親である ことに気がついた。

　先日父親に、「お前は結婚する気にさえなれば、できる。」と 言われ、母親に、「父親みたいな仕事しかしない人間は嫌だ。」 と言っていた私自身がすごく恥ずかしくなった。

　その他にも、留学する時も大学院へ行く時も私に全く意見せず、 賛成してくれたのは父親だったことに気付いた。

　母親に関しては、私が生まれてから一番の理解者であり、内観 していくうちに気が付いた私の至らない点は、すべて母親に注意 し続けられていた事と同じだと気が付いた。

　ずぼらなことによる金銭の支払いの遅れ、物の返却忘れや待ち 合わせの遅刻などは、大らかさによるものだから多少はいいと勝 手に解釈していたが、私のずぼらさによって多くの人に無駄な時 間を作り出し、ご迷惑をかけていたことに気が付いた。

　また、母親にしていただいたことに関してお礼も言わず、やっ てもらって当たり前のような姿勢で今まで接していたことにも気 が付いた。

　母親に対する内観の中で、母のことを好いていなかった姉のこ とを考えずにはいられず、なぜ母親が好きではなかったのだろう か答えを捜そうとしていた。

　けれども、お坊さんに「答えを見つける必要はなく、ただ姉に 感謝の気持ちを伝えたらいいんだ。」と言われ、今までずっと気 になっていたものがなくなり、気持ちが楽になりました。

　お坊さんが初日に、「人間は勝手に問題を作り、自分で自分を 苦しめる。」とおっしゃっていましたが、本当にそうだと身をも って感じた。

　自分がした嘘や盗みは、思っていた以上に数多くあり、本当に 情けなく、罪深いところが多々あると思い、私の身の回りで嫌な ことが起きても、身から出た錆だと思うしかない。見栄やプライ ドのための嘘は今後絶対にしない。

　この内観で感じたことは想像以上に得るものが多く、この気持 ちを持続できるよう頑張りたい。

　最終日前夜に行った目標作成は楽しく、ぜひ多くのことを実現 させたいと思う。また、結婚する時には相手と共に内観に来て、 よい家庭を築く一歩にしたいと思う。

　最後になりましたが、お世話になった皆様、本当にありがとう ございました。