今回は、大前研一氏の著作『民の見えざる手』(デフレ不況時 代の新・国富論)の後半を紹介させていただきます。今後の日本 の針路を推測するための好著です。多くの人が読んで、日本を良 くしていきたいものです。
「第5章(20年後のグランドデザイン)人材力と地方分権で国が変わる」
a.躍進する韓国企業と低迷する日本企業の最大の原因は日韓の人 材格差にある。英語力とリーダーシップのあるグローバルな人材 が韓国人に多い。
サムスン電子には社員3千人海外留学制度があり、それに年間 千億円をかけて、人材育成が最優先という原則を徹底している。 ちなみにサムスン電子では、TOEIC900点以上が最低条件。 幹部は950点以上。TOEICは990点が満点。
サムスン電子1社の昨年の年間営業利益約8700億円は、日 本の大手電機企業(日立やパナソニックやソニーなど)8社の約 8300億円より多い。
b.人材力を高めるためには、大学をはじめとする教育改革が第一 である。大学が変われば、小学校まで変わる。21世紀は人材力、 すなわち、国力の時代である。
c.本来、文部科学省の役割は、「責任ある社会人」「世界で通用 する人間」「自分の力で飯が食える人間」を養成することである。
その目的に沿って、カリキュラムを根本的に作り直すべきであり、 その改革はまったなしである。日本の若者は、ずるずると能力が 落ちているし、どんどん「内向き、下向き、後ろ向き」になって いる。
d.現在アメリカの企業は、戦場で実際に部隊を指揮し、予測不可 能な事態に対処した経験のある中堅幹部軍人を即戦力として採用 している傾向がある。
e.企業はボーダーレス留学生を積極的に採用し、活用するとよい。
f.北欧型ロハス教育は韓国型詰め込み教育と反対の教育方法。答 えのない世界で、自分なりの答えを見出す為に「考えること」を 教えるやり方である。すべての問題において、クラスのディスカ ッションから結論を導きだすトレーニングを重ねる。
ロハスとは、環境と共存しながら、健康で持続可能な社会を志 向するライフスタイルの事。北欧のロハス教育は家族とコミュニ ティと地球環境の三つを大切にする。日本の教育もこれを目指す べきであろう。
g.大前氏の日本改革提案
(1)人口30万人の基礎自治体に権限を移す。法律も基礎自治 体ごとに決めてよくする。サイバー化や外注化により、行政コス トは10分の1にできる。全ては、地域住民が決められるように する。
(2)成人年令を18才にする。
(3)国民総背番号制で行政コストを更にカットする。
(4)新興国を支援する多極外交へ転換する。10年単位で相手 国の基盤つくりを手伝う。
「第6章(発想の転換)個人はグッドライフを求めよ」
a.国が富むとは、個人が生活を楽しむことである。
b.日本の政治家や官僚には期待できない。
c.団塊世代の生き方を変えることで、日本経済は変わる。
d.高齢者も生活に困る人と富裕者に二極化している。
e.いざと言う時に備えてお金を使わないので、国が国債を通じて、 いつまでも無駄遣いをしている。
f.定年後について:(老後は会社にいた時間よりずっと長い)
(1)定年退職後に何をやりたいか、20個書き出してみる。
(2)好奇心と向上心が大事。異質との出会いがその源となる。
(3)自分なりの目標を持つ事である。
(4)現役時代とは違うコミュニティに入るとよい。
(5)どんな趣味も遅すぎることはない。
(6)自分の人生をエンジョイすることに、もっと頭とお金を使う べきである。
g.提案:
(1)先ず、日本の現在状況の共通認識を持とう。
(2)国債から資金を移動しよう。
(3)基礎自治体構想を実現し、住民が決定し、自治体間で、安 心で安全で住みやすい町づくりの大競争時代を起こそう。(終)
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