今回内観させていただいたなかで、私にとって一番大きかった なと思うことは、別れた妻に抱いていた憎しみや恨みといった気 持ちが、かなり薄らいだことです。
内観三日目の夜だったと思いますが、それまで私の父と母に対 して一度目の内観を終え、床についた時、ふと別れた妻のことを 考えていました。
内観というものが、今までして頂いたことへの感謝、御礼、あ るいは、許しを求めるものだと、かすかながら気づき始めた頃だ と思います。
床に着きながら、夜の静かな暗闇の中で、別れた妻は私に何を してくれたんだろうと思い返しました時、それは妻の作ってくれ た料理がいつも大変おいしかったことや、妻の当初の私に対する やさしさなどが、一瞬に思い出され、確かにあの頃は私によくつ くしてくれていたなと思い返した時でした。
その時です。心の中につっかえ、わだかまっていた別れた妻へ の気持ちが、わずかながらですが、溶けていくような感覚が自身 に起りました。
妻と別れて既に十年程の時間が過ぎています。別れた当初の頃 のような強い憎しみは薄らいできているのは、自分でも感じてい ます。
しかしながら、妻の手元へ行った、まだ幼かった二人の娘達が、 小中高への入学、卒業あるいは、娘達の誕生日など、節目節目に 父親として立ち会えない惨めさ、娘の日々の成長をそばで見守っ ていけない自身の寂しさが、こみあげてきていたのは事実です。
そういった思いが、今までもこれからも続くであろうと思うと、 いきなり(と今まで自分では感じていました)出て行き、聞く耳 を全く持たなかった当時の妻へのわだかまりは、これからも一生 捨てられず、続いてゆくものだろうと、確信に似た気持ちさへ持 っていました。
過去、その頃の自身の行いを振り返ってこなかったわけではあ りません。妻が出て行くには、私の方にそれなりの原因があるこ とは、今まで何度も思い返してまいりました。
そのように自分のいたらなさを反省しながらも、愛していた娘 をいきなり引き離され、このような惨めな思いを抱かせてしまう 別れた妻のことを、やはりずっと許すことが出来ませんでした。
妻と別れてやっと気付いたことと言えば、やはり家族が一番大 切なのだということでした。無くしてから人は、無くしたものの 大きさに気付くとよく申しますけれど、まさしくその通りです。 今さら取り返しがつくものではありません。
今回内観させていただいて強く感じ、思った事は、家族をつな ぐことで、大変大切なことは、日々のねぎらいや感謝の言葉の積 み重ねではないのだろうかと言うことです。
結婚当初は当たり前のように出来ていたことも、日がたつにつ れ、あるいは、二人の生活が当たり前の日常に変わっていくにつ れ、私自身が忘れていったことでした。
そんなふうに自分を思い返してみれば、別れてから娘達を女手 ひとつで育ててくれている別れた妻に感謝の気持ちが芽生えるの に気付くことが出来たのです。
そして、四日目の夜のお勤めの時でしたが、先生が貪瞋痴のお 話をして下さいました時、ああ、確かに私は貪り過ぎていたんだ なと、気付かせて頂きました。
身の丈とわきまえず、上へ上へと背伸びして、自身の夢を、あ るいはまた、成功して得られる名声や富のことなどに目を奪われ すぎていたんだと思えました。結局は自分の欲が、自分の惨めさ を招いた原因であるんだなと納得できたように思えます。
それにつけても、その頃のそしてそれから今までの母の心労は いかほどだったろうかと考えるにつけ、大変な心配や気苦労をさ せていたんだなと、改めて母に対して申し訳ない気持ちが心の奥 からわいて来ました。
これから先、私の人生がどう変わってゆくかは分かりませんけ れども、先ほど記しましたように、せめて身近に居る母から、日 々の感謝、ねぎらいの言葉、あるいは、料理を代わって作るとか、 小さな事から始めてゆきたいと思った次第です。
この七日間、先生方はじめ、お食事やお風呂のお世話をいただ いた誕生寺の皆様方に心から御礼を申し上げたいと思います。あ りがとうございました。
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