11)人口減少社会では今までとは逆に、労働力のあるところに企 業が移動するという面が強まると考えられる。消費需要の拡大と 多様化、そして地域的な労働力構造の変化がその要因である。
それは地方地域の所得水準を向上させ、市場としての魅力を高 めるだろう。産業分布は分散化するから、地方での就業機会は増 加する。
一人当たり県民所得は地方で上昇し、大都市で低下する。大都 市圏の住民の平均的生活水準は現在より低下し、地方地域の生活 水準は向上する。地方が今までより豊かになり、都市との生活水 準格差は縮小する。
12)年金と公共事業だけは、早期の抜本的政策対応がなければ悪 化の一途をたどり、近い将来確実に崩壊する。人口減少高齢社会 が豊かな社会となるかどうかは、社会扶助と公共事業という社会 システムがいかに再構築されるかにかかっている。
13)税収の減少により、既存の社会資本を再点検し、住民にすべ ての情報と財源を開示したうえで、地域住民にどの社会資本を残 すのか、どの政策や工事を優先するのかの選択を行ってもらう必 要がある。
今までのように何でも整備するという大盤振る舞いはもはや不 可能であり、人口減少社会で公共事業を今までのように行うと、 日本経済はさらに縮小するのである。
公共事業は今後大幅に縮小し、また大都市圏の税収の大幅な減 収によって補助金も縮小せざるを得ないだろう。
14)今後の社会資本整備計画は、住民や地方自治体側から作られ る必要がある。また、基本的には税財源も地方に移譲される必要 がある。
地域住民の増税か社会資本かの選択によって、社会資本整備の より一層の厳格化が図られるであろう。また、地域住民も自己責 任を負うことになる。
15)人口減少高齢化により税収もまた縮小する。しかし、財政支 出も教育費などのように減少するものも多い。財政支出の長期的 拡大は人口減少社会では不可能であり、支出削減にもっと努力す べきである。増税は日本経済をさらに縮小させるだけである。
16)人口減少経済においては財政による景気拡大効果は期待でき ないと考えたほうがよい。何故なら、企業が財政支出の拡大に誘 発されて設備投資を行うのは、先行き需要は必ず拡大すると考え る場合である。
今後の企業にとっては、継続的に縮小する国内需要のもとで、 いかにして自己の生産設備を縮小するかが経営の基本となる。
財政支出が一時的に拡大したところで、人口減少による国内需 要の継続的な縮小という事実は変わらないのだから、誘発投資は まず起きないだろう。
筆者は、人口減少社会では均衡財政が望ましい財政の姿だと考 える。
17)ライフスタイルの多様化により、労働者の人口は分散する。 高齢者はサービスのよい都市部を選択する人が増加するだろう。 地方地域でも都市部への人口集中が進み、過疎地はますます過疎 化するだろう。
18)人口減少経済においては、技術開発力の向上が飛躍的に重要 となる。人口の減少高齢化が日本経済にもたらす最大の問題点の 一つは競争力の低下であり、技術開発力の向上は、日本経済を持 続可能とするための至上命題である。 そのためには、優秀な外国人の活用を図る、世界に向かって開 かれた研究開発体制に変革する必要がある。また、それは日本人 研究者にとっては競争の激化を意味するが、今後は、世界中の資 金と人材を集める事のできる国が繁栄するだろう。
19)設備投資へのリスクを抑えるために、生産設備にかかるリー ス事業は今後拡大するだろう。
(人口減少経済での経営基本方針は、スリム化と絞込みと収益性重視である。)
20)都市の収支は今後確実に悪化し、大都市ほど著しい。都市の 老朽化やスラム化の危険がある。
21)ライフスタイルは多様化する。一つのタイプはスぺシャリテ ィを身につけ、より良い所得を目指す上昇指向のタイプである。
もうひとつは、必要な時だけ働く、「働かない自由」を謳歌し ようとするタイプである。ただし、このタイプを選択するのであ れば、生活のスリム化を図る必要がある。モノから得られる幸福 ではなく、自由な時間がもたらす幸福を追求しようとするタイプ である。この二つのタイプの間に様々なライフスタイルがあるだろう。
22)年金制度は縮小の方向に向かわざるを得ない。年金を軸とし た老後の生活設計も変化を余儀なくされ、老後もまた自己責任と いうことになる。また、余暇時間は確実に増加する。
23)人口減少経済の共通項は「多様化」である。
多様な経済行動、ライフスタイルの多様化、就業形態の多様化、 余暇の多様化、企業の多様化、製品・サービスの多様化、地方経 済の多様化、都市の多様化、行政手法の多様化である。
小さな政府こそ、人口減少経済を豊かな社会にするために望ま しいと言える。
24)日本人にとって、発想の転換とシステム全般にわたる大幅な 変更が必要とされる。
国内市場と人口の縮小のもとでの豊かさとはいかなるものなの か。そして、その豊かさはいかなる基盤のもとで生まれるのか。
それを日本人の誰もが自らに問う事こそが今求められているの であり、それが発想の転換とシステムの変革につながる。(終)
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