1998年2月10日第21号
幸福ニュース

なぜ虎ではない寅
今年は寅(とら)年です。十二支の三番目に当ります。しかし寅(とら)と言うのになぜ虎の字を書かないのでしょうか。十二支はすべて動物の名が付いていても字は違います。ちなみに寅の字を諸橋の{大漢和辞典}で調べてみました。

本来の字は寅となっていてウ冠・人・臼からできています。ウ冠は人の住む所。つまり家です。人は人(ひと)を形どり臼は両手を合わせて固くむすぶの意味と書いてあります。

つまり人が家の中にあって、その身を固く結ぶ、つまり[身をつつしむ]というのがこの字の本来の意味でありました。家の中にあって手を固く結ぶというのは何やら皆さんがそれぞれの家庭で朝夕のお参りをされている姿が連想されます。

つまり寅年の寅とは[身を慎む][戒める][油断しない]などの意味なのです。現代の世相を考え合せるとまさに今年一年は自らを戒め、身を慎むの意味を持った寅年のようです。

ところで[戒める]とは、これまで何度かお話ししましたように、戒の宇は二つに分けられ、一つは予(ほこ)つまり武器の意味、もう一つはおさめる、我が身にふりむけるという意味ですから人を攻撃するための予を、他人にではなく、自分に向け自ら深く内省すること。これが戒めるという言葉の本来の意味です。

では[慎しむ]とはどのような意味を持っているのでしょうか、[まことにする][おそれる][いましめる][したがう][ひく]などの意味に解されています。 戒めると似たような意味のようです。

これに対して私はこの字から独自にこのように考えてみました。立心遍に貞ですから、[自分の中にある本来の心に従う][己の内なる真の心に従う]と解釈してみました。

〈心の奥にあるものを観る〉

私達の本来の心とは何でしょうか、仏教的に解釈すれば、善でも悪でもないその根源を生み出す大基の心。また心の奥にある本来清浄なる仏心と解釈することが出来ます。

仏教の心理学派と言われる唯識(ゆいしき)学派ではこの心を阿頼那識(あらやしき)と言っています。真言密教ではこの阿頼那識の更に奥に全ての仏を生み出す大日如来の智慧としての法界体性智(ほうかいたいしょうち)を発見しています。

いずれにしても[慎しむ]ということは、[内省・内観を通して真(まこと)の心をもって生きる]と解釈できるのです。 蓮華院では信仰の三信条として反省・感謝・奉仕を常に説いています。今年の寅年はこの反省をもっと深く掘り下げる年にして頂きたいものです。

【坂村真民詩集】
《時》
日の昇るにも
手を合わさず
月の沈むにも
心ひかれず
あくせくとして
一生を終えし人の
いかに多きことぞ

道のべに花咲けど見ず
梢に鳥鳴けど聞かず
せかせかとして
過ぎゆく人の
いかに多きことぞ

二度とないこの人生を
いかに生き
いかに死するか
耳かたむけることもなく
うかうかとして
老いたる人の
いかに多きことぞ

川の流れにも
風の音にも
告げ給う声のあることを
知ろうともせず
金に名誉に地位に
狂奔し終わる人の
いかに多きことぞ

生死事大無常迅速
時人を待たず噫々(ああ)

【内観体験記】2
不登校(42才 女性)
{内観とは、身近な人々(母または母親代わりに育ててくれた人、父または父親代わりの人、配偶者など)に対する自分を見つめるために、
@していただいたことAしてさしあげたことB迷惑かけたこと、
について、具体的な事実を過去から現在まで調ベる中で、色々な気付きや発見により、悩みの解決やより良い人生を過ごせるようになる方法です。}

11月8日の夕方から11月13日の午後までの6日間、息子と2人、不安な気持ちと緊張する気持ちを抱いて蓮華院にお世話になりました。こちらにお世話になった理由は、息子が昨年の9月より登校拒否になり、この頃では家庭内暴力にまでなりました。

本人もいたたまれない毎日を過ごすようになり、私も色々と相談する所を訪ねてまいりました。けれども、どこへ行っても息子の気持ちを満たしてやることができず、なおさらいらだたせ、傷つけるばかりでした。

そんな時、登校拒否に関する本を色々読み漁っております時に、このお寺で内観をやっておられることを知り、親子2人で内観をしてみようと思い、息子には、親子2人でしばらく修行するのもいい経験になるからと、内観のことは言わずに連れてまいりました。

さて、息子共々6日間、生まれて初めての内観ということをさせていただきましたが、今まで毎日々々の日々の生活を、ただただ流されるままにその場しのぎで生きてきました。

私にとって、過去の自分のしてきた父母に対する自分の行動、主人に対しての言動、姑に対しての行為をじっくりふりかえって調べてみるということは、それはそれは自分にとってなんともはずかしく反省することばかりでした。

今まで父母に対しても手のかからない、心配をかけていないと思っておりましたが、小さい頃からを調べてみますと、苦労と心配ばかりかけていた自分を知り、本当にはずかしくなりました。

親に感謝の気持ちも抱かず、自分の子ばかりを責めている自分に今やっと気ずかせていただきました。自分だけが一番つらくて、苦労させられていると思っていたことが、間違いだったということにやっと気がつきました。

本当に家族の者には悪いことをしたと思います。主人を心の中では責め、姑のせいにして、自分だけが被害者のような顔をしてきたことが悔やまれてなりません。本当に申し訳ありませんでした。

機会がありましたら、この内観をもう少し深めさせていただいて、根本からやり直したいと思います。皆様方には、本当に良くしていただきありがとうございました。

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